必死で呼吸を繰り返して、ようやく視線をアルバムに戻す。そっと手元に寄せて、三組のページをもう一度見た。
右上から順に、一人ずつ目で追っていって。
そして、見つけた。見つけてしまった。
「……三上、芽衣……」
声の主。
皆と同じように笑っているはずなのに、なぜかその写真は泣いているように見えた。
口角は上がっているし、目尻も垂れ下がっている。
なのにどうして、この人は泣いているように見えるのだろうか。
まるで、こんなのこいつの本当の笑顔じゃないって俺自身がわかってるみたいに。
それが、俺の記憶と関係あるのだろうか。
じっとその写真を見つめていた俺の元に声がかかったのは、それから数分後だった。
「大雅」
「……母さん」
アルバムを見ている俺に、母さんは驚いたような顔をした後になぜか泣きそうな顔をした。
「それ、見られるようになったのね」
「……なんか、今見なきゃいけないような気がして」
母さんの後ろから、龍雅もやってきていた。
「頭が痛くて。でもこれ見てたら、なんか声が聞こえてきて」
「声?」
「この、三上芽衣の声がするんだ。頭の中で聞こえてくる。……思い出せって、言われてる気がするんだ」
噛み締めるように言葉をこぼすと、龍雅が俺の隣にきて。
そして俺の顔に再び拳を振り上げる。
その拳が飛んできて、俺の頬に当たる寸前。
「龍雅!」
母さんの声に、その手はぴたりと止まる。
「……リビングで話しましょう」
俺と龍雅は、無言で部屋を出た。