……今日も、大丈夫。
「おはよう! 大雅」
「俺の横に立つな。つーか視界に入るな」
「お隣さんだもん。それはちょっと無理かな」
「マジでうぜぇ……ホント、何で俺にそんなに突っかかるんだよ。男探してんなら他当たれよ」
「違うよ。わたしは大雅と一緒に学校行きたいだけだよ」
「……キモい。うざい。俺の前から消えろ。以上」
「あ! ちょっと大雅! 待ってよ!」
わたしの言葉から逃げるように走っていってしまった大雅を追いかけるものの、あっという間に見えなくなってしまい足を止めた。
取り残された私はじっと正面を見つめることしかできない。
わたし、三上 芽衣と永原 大雅は親同士が親友で、クラスは違うけれど同じ高校に通う二年生で、お隣に住んでいて。
産まれた時からずっと隣にいた。それが当たり前だった。
昔は毎日のように一緒に遊んでいたのに。
あるときを境に、わたしは大雅に嫌われてしまっている。いや、避けられてるって言ったほうがいいのか。
それでもめげずに毎日こうやって挨拶を欠かさないから、さらにうざがられて嫌われているのはわかっていた。
────ごめんね大雅。わかっていても、やめられないんだ。
わたしにできることは、これしかないんだ。
こうするしか、ないんだ。
日記に書かなきゃ。
"今日も笑顔で「おはよう」が言えた"って。
痛む胸に気付かない振りをしながら、深呼吸をしてわたしも学校に向けて歩き出した。