"大雅、ちゃんと聞いてる?"
"もー、聞いてるなら返事くらいしてよー"
頭の中を同じ声がぐるぐると回っていた。
本当は、その声が誰のものかなんてわかっていた。
わかっていたけれど、認めたくなかった。
認めてしまったら、今までの俺自身の行動や言動にひどく失望してしまいそうで。
後悔と罪悪感で頭の中がいっぱいになってしまいそうで。
だけど。
"明日の花火大会、おばさんが浴衣着付けてくれるって言うからお昼食べたらそっち行くからね"
認めざるをえないくらい、聞けば聞くほど、全く同じなんだ。
"大雅! おはよう!"
毎朝俺に笑顔を向けてきた、あの明るい声と。
俺は知らないと何度言っても、
"わたしは大雅を知ってるよ"
と笑うあの切なげな声と。
ついこの間公園で聞いた、
"もう、大雅には会わないから"
あの悲痛な声と。
全部、同じなんだ。
"さよなら"
それに気づいたとき、身体の奥底から湧き上がるような言葉にできない感情が胸を支配した。
あのアルバムを見ちゃいけない。思い出しちゃいけない。
でも、ここでやめたら、また逃げることになる。
龍雅にも言ったじゃないか。逃げずに過去と向き合うんだって。
それがどんなにしんどくても、どんなに残酷なものでも。
俺は、向き合わなきゃいけないんだ。