「もう、毎朝大雅に会いに行くのはやめるから。付きまとったりしないから。大雅の前には現れないから。本当に今までごめんなさい。
もう大雅には会わない。だから、安心してね。彼女さんとお幸せにね。……言いたいことはそれだけ。じゃあ、時間をくれてありがとう」
「……」
「……さよなら」
深呼吸をしてから、滲む涙で視界がぼやけながらも必死で笑顔を見せてからその場を去る。
虫が良すぎるのはわかっていた。
だけど、言いたいことだけを言って公園を出たのは、もう一度大雅を見たら今度こそ泣いてしまうのがわかっていたから。
ちっぽけなプライドでしかないけど、大雅が最後に見るわたしは、泣いているわたしじゃなくて笑顔のわたしでいたかったから。
だから、後ろは振り向かずに走った。
息が切れるほど走って、次第に視界が悪くなっていく。
ドンッと誰かにぶつかって転びそうになって膝をついて、「ご、ごめんなさいっ」と震える声で叫んで、また立ち上がって走り出す。
……もう会えないんだ。
自分で決めたことなのに、いざそう思ったら急に実感が湧いてきたみたいに涙がとめどなく溢れ出てくる。
気が付けばわたしの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていて、家にたどり着く前についに走れなくなってしまった。