『大雅。はよ』


『透。おはよ』


『……今日も走ってきたのか?』


『あぁ、ストーカー女が毎朝しつこくてな』


『……』



透は毎朝同じことを聞いて、俺も同じことを答える。


そうして何とも言えない顔をされるのがいつものことだ。


クラスは違うけれどあいつとは同じ学校に通っている。最初はもしかしたら学校でも付き纏われるんじゃないかと思っていた俺は、拍子抜けしてしまうほどに学校ではすれ違っても目すら合わない。


かといって諦めたのかと思えば翌朝また俺の家の前で待っているのだから理解に苦しむ。


それは中学を卒業して高校に入学してからも同じで、狙ったように同じ学校に進学したあいつは高校でも毎朝家の前で俺を待っていた。


どうしてあいつが俺に付き纏うのか、皆は何を知っていて、俺は一体何を忘れているのか。何もわからないままあっという間に二年の月日が経過してしまっていた。


今までは鬱陶しくて頭が痛くなるからやめてほしいの一心だったけれど、それももう二年続いている。


そろそろ諦めてくれないだろうか。


そう思いながら自宅へ帰ってきた時、家の前であいつが待っていることに気が付いた。