『大雅、──ちゃんが来てくれたわよ』
何故だろう。母さんの声がうまく聞き取れなかった気がした。
それに聞き返す間も無く、入ってきたその女。
『……大雅?』
俺の名前を呼ぶ声。そしてドアの向こうから見えた姿。
俺の同い年くらいの、女子。多分近所の子なのだろう。
目がぱっちりしていて、とても可愛らしい。
そう思った瞬間、今まで感じたことのないほどの頭痛に襲われた。
『うっ……あっ……』
頭が割れそうで、息が苦しくて。胸の辺りがざわざわして涙が滲んでくる。
『大雅……!? どうしたの!? どこか痛むの!?』
慌てて駆け寄ってくるその女の身体は包帯だらけで、俺より酷い怪我をしているのは一目瞭然だった。
それなのに、身体が勝手にその手を振り払う。
『触んなっ……』
『……っ! ご、めんっ……』
『大雅!』
痛みが落ち着いてくると、自分の身体が怖くなってイライラが募る。
なんだよ、今の。なんでこんなに頭が痛い?
『……つーかお前っ、誰だよっ……』
『え……?』
『母さんもっ、しらねぇ奴勝手に部屋にいれんなよ!』
『大雅……あなた何言ってるの……?』
俺の八つ当たりで母さんがショックを受けて言葉を失っているのを、どこか他人事のように感じていた。