朝目が覚めた時、懐かしい夢を見て寝ながら泣いていたことに気がついた。
喉の奥がカラカラに乾いていて痛くて、でも瞼が腫れている感じはなくて。
その代わりに目尻から耳の方へ涙が流れた跡がついているのか、なんだかこめかみの辺りがザラザラとしていた。
洗面台の鏡の前で、顔を洗って歯磨きをしてから鏡越しに無理矢理口角を上げる。
笑顔と呼ぶにはぎこちないかもしれないけれど、仏頂面とは思われないはず。
「よし。……今日も大丈夫」
と自分に言い聞かせるように何度も呟いた。
「芽衣、おはよう」
「おはようお母さん」
「今日も行くの? ……無理しなくていいのよ」
「ううん。わたしがそうしたいだけだから。無理なんてしてないよ」
「……そう。わかった。でも……」
「わたしなら大丈夫。だから心配しないで」
何も言えなくなってしまったのか、口を閉じたお母さん。
そんなお母さんが用意してくれた朝ごはんを食べて、お弁当をカバンに入れて。
「行ってきます」
身支度を整えてわたしは家を出た。