何か、大切なことを忘れている。
二年前のあの日から、ずっとそう思っていた。
でもそれが何なのかははっきりとはわからなくて、頭の中に靄がかかったようによく見えない。
手が届きそうなところにあるような気がするのに、いくら手を伸ばしてもかすりもしない。
それどころかどんどん遠くなっているような気もして。
二年間、ずっとそんなもどかしさを抱えたまま生きてきた。
いくら考えても何も思い出せないんだから、きっと本当はそんなに大切な記憶じゃないんだ。
そう思ってどうにかやり過ごしてきたんだ。
それなのにここ数日の間、頭の中の警鐘がどんどん大きく鳴り響いているような気がする。
思い出せ。思い出すな。思い出せ。思い出すな。
まるでそんな言葉が何重にも鎖で縛られた脳内を交互に駆け回っているようだ。
耳に手で蓋をしたところで全く意味が無くて、頭の中はどんどんうるさくなるだけ。
その度に鎖は抗うように締め付けをキツくしていくため、これでは何も手につかない。