それから一週間後。
あの後も日を変えて何度か図書室に行ってみたけれど、大雅には会えないまま時間だけが経過した。
おかげで勉強が捗ってしまった。いいことではあるが、なんとなく悔しい気もする。
変わらず大雅には朝ストーカー扱いされているけれど、たまにそこで嫌々ながらも会話をしてくれるだけまだマシなのか。
無視されないだけ良いと思った方がいいのか。
考えすぎて何度もため息をこぼしそうになっては紫苑に心配はかけられまいと堪える、そんな昼休み。
紫苑と一緒にお弁当を食べ終えたところで、一つの噂話が聞こえてきた。
「ねぇ聞いて聞いて! 六組の永原くんと奈子ちゃん、付き合い始めたんだって!」
「え! うそ! 奈子ちゃんって斉藤奈子ちゃん?」
「そう!」
「でも奈子ちゃんって確かこの間永原くんにフラれたって騒いでなかった……?」
「それがね、ダメ元で何回も告ったらOKしてくれたんだって! 六組の友達が言ってた!」
「えぇー、うそ、なんかショック……」
その会話を聞いた瞬間、わたしは口に運ぼうとしていた玉子焼きをお弁当箱の中に落としてしまった。
お母さんが綺麗に作ってくれた玉子焼きがいびつな形になってしまったのをじっと見つめているうちに、いつの間にか話を聞きつけたクラスメイトたちが教室の真ん中に集まっていた。