……これは暗号か?それとも呪文?
そんな馬鹿みたいなことを考えてしまうくらいには、難しい問題ばかりが並んでいてわたしは頭が痛くなる。
ダメだ。わたしにはとても理解できそうにない。もう少しレベルを下げた大学は……といくつか指でさしながら歩いて背表紙を目で追っていると。
ドン、と誰かにぶつかって転びそうになった。
「ご、ごめんなさいっ」
「いや……って、てめぇ」
「え?」
「こんなところでまで会うとかなんなんだよ……」
聞き覚えのある声に慌てて顔を上げると、わたしに舌打ちをして
「あぁー……たまに勉強しようかと思ったらこれだ。マジでついてねぇ」
と吐き捨てて去っていく大雅の後ろ姿があった。
「た、大雅……?」
「うるせぇよ。馴れ馴れしく呼ぶなっつってんだろ」
図書室だからか、いつもより小さな声でそう言った大雅は深いため息をつきながら図書室の入り口の方に向かっていく。
どうやらもう帰ってしまうようだ。
……ぶつかっただけとは言え、大雅の身体に触れたのはいつぶりだったのだろう。
わたしはドクドクと高鳴る心臓を手で抑えた。