「それに、わたしは大雅が全部を思い出したら一発殴らせてもらうって決めてるからいいの」


「えぇ!?」


「芽衣を苦しめたんだもん。それくらいしないとわたしの気が済まない。まぁ、大雅のその時の態度にもよるけどね」


「ふふっ……大雅を殴るのはダメだよ」


「えー、なんでー?」


「だってそしたら紫苑の手が痛くなっちゃう」



真っ白で細くて綺麗な手を、わたしのせいで傷つけたくなんかない。



「そんなの気にしなくていいのに。っていうか、大雅が可哀想だからとか言うのかと思ったらわたしの手の心配? えー、嬉しい」


「ふふっ、紫苑にそんなことさせられないもん。気持ちだけ受け取っとくよ」


「ははっ、そこまで言われたら仕方ないね」



大雅の態度次第だなあ、なんて言っている紫苑はなんだか嬉しそうで、わたしも笑ってしまう。



「うん。……だけど、やっぱり紫苑は頼もしいなあ」


「そう? まぁでも、わたしは芽衣の親友の座は誰にも譲るつもりなんて無いから。大雅が思い出すまで、わたしが芽衣を守るから安心してね!」



ドンと胸を叩く紫苑が誰よりも頼もしくて、思わずぎゅっと抱きつく。



「紫苑ってば本当イケメンすぎる。大好き。女の子にしておくのもったいないくらい」


「ははっ、いいよ、わたしの彼女になる?」


「なるー!」



そんな軽口を言い合いながら歩くわたしたちは、目の前のことしか見えておらず。



「あ、大雅くんみーつけた! 待ってよ、どこ行くの? わたしも行くー!」



遥か後方で大雅にそう話しかける姿があることに、全く気が付いていなかった。