「よ、紫苑、芽衣。昨日ぶりだな」
「透。……と、大雅」
紫苑の気まずそうな呟きの先にいたのは、昨日ぶりの透くんと大雅。
「チッ……んで学校でまでこいつに会わなきゃなんねーんだよ……」
しかしわたしを見て舌打ちをした大雅は、わたしを視界に入れないように不自然に壁側を向きながらスマートフォンをいじり始めた。
学校で大雅とすれ違うことなんてほとんど無いため、突然の遭遇に驚いてわたしは何も言えないまま視線を送ることしかできない。
しかし紫苑と透くんが立ち止まって少し喋っている間に大雅はずんずん進んでいき、
「おい透、早くしろよ、行くぞ」
とこちらを見ないまま透くんを急かす。
「ちょっと待てって。……ごめん二人とも。また今度ゆっくり話そうな!」
「うん、またね」
「ばいばい」
二人で透くんに手を振り、じっと大雅の後ろ姿を見つめる。
大雅は、もう進路を決めてるのかな。
そう考えると、胸が苦しくなる。
ダメだ、一旦考えないって決めたじゃん。それに、わたしの進路はわたしが決めなきゃいけない。
そこに大雅は関係無いんだから。
あたりまえのことを自分に言い聞かせながら深呼吸をすると、紫苑が噛み締めるように呟いた。