「ね、やっぱ大学進学するよね?」
「わたしは美大受験するつもり。狭き門だけど」
「え! すごい!」
「俺は専門」
「わたしもー」
「え、もしかして皆進学組? 俺就職なんだけど……」
「え、うそ! 進学しないの?」
「いやうち下に兄妹多いから、就職しか選択肢ないんだよ」
「そっかあ」
あれだけ皆受験なんて嫌だ、考えたくもないなんて言っていたのに、ホームルームが終わるとすぐに自分の将来について語り出す。
本当の意味で何も決まっていないのは、もしかしたらわたしだけかもしれない。
なんだか一人だけ取り残されてしまったような気がして、焦ってしまう。
「芽衣?」
「……え?」
「もう、ボーッとしてどうしたの? 次移動だよ?」
「……あ、そっか」
知らぬ間にボーッとしていたらしい。
クラスの皆はほとんど授業のために移動し始めたようで、教室に残ってるのは数人だけ。
「ごめん、今準備する」
慌てて教科書とペンケースを手に持って、紫苑と一緒に教室を出た。