「え……?」


「母さんもっ、しらねぇ奴勝手に部屋にいれんなよ!」


「大雅……あなた何言ってるの……?」



おばさんの驚く声なんて、全く耳に入らなかった。


それくらい大雅の言葉が私の頭の中をぐるぐると回っていた。



「た、たいが……?」


「あ? だからお前誰なんだよ。人の名前勝手に呼んでんじゃねーよ。とっとと帰れ!」


「なんで……そんなこと……」



一体どういうこと?


何が起こってるの?



「わ、わたしのこと、わかる……? 芽衣だよ、たい──」


「うるっせぇな! お前のことなんて知らねぇよ! 頼むから帰ってくれよ!」


「っ……」



近くにあったものをぶつけるように放り投げた大雅に、思わず一歩引いた。


知らない?わたしのことを?なんで?


目の前にいるのは、間違いなく大雅のはずなのに。



……わたしのこと、覚えてないの……?なんで?どうして?意味わかんないよ。



だって、わたしは大雅の幼馴染で。毎日一緒に登下校してて。


クラスは隣だけれど、大切な存在で。隣にいるのが当たり前で。


本当は、花火大会のときに大雅に告白しようって決めてたのに。


でも今年は事故で言えなかったから、退院したら言おうって決めてここに来たのに。


なのになんで?わたしのこと忘れちゃったの?