道路に飛び出してこちらに向かってきていた大雅の身体を思い切り押した。
浴衣が汚れるとか、着崩れるとか、そんなのどうでもよくて。
ただ大雅が無事であってほしい。それだけを思っていたわたしは次の瞬間、迫り来る車と鳴り響くクラクションに視線を向ける。
……あぁ、こんなタイミングで、靴擦れが痛いことを思い出してしまった。
走ったことにより皮膚が抉れたのだろう。もう痛みで動くことはできなかった。
全てがスローモーションに感じ、迫り来る痛みと恐怖から逃げるためにギュッと強く目を閉じて。
ドンッ……!という音とともに、息ができないほどの痛みの中身体が飛んでいく。
「……き……キャアアアア! 人が……! 女の子が轢かれた!」
「きゅっ、救急車! 誰か! 誰か救急車呼んで!?」
遠のく意識の中、辺りに響く悲鳴の中で痛くて重い身体をどうにか動かして、大雅を探す。
「芽衣……?」
何が起きたのかわからないのだろう。大雅はわたしを見て震えながら駆け寄ってきた。