「……どうした、そんなところ突っ立って。入らねぇの?」


「……浴衣着崩れるの怖いからあんまり動かないようにしようかと」


「なるほどな? じゃあ行くか。階段降りるの気を付けろよ」


「うん」



特に浴衣については何も言ってくれなかったけれど、大雅がわたしを見て一瞬目を見開いたような気がした。


驚いてくれたんだ。良かった。


大雅が先に階段を降り始めて、わたしが後ろに続く。


一足早く一階に降りた大雅が、わたしにそっと手を伸ばした。



「ほら、危ないから掴め」


「あ、ありがとう」



差し出された手に自分の手をのせると、優しく掴んでくれてわたしを支えてくれた。


そのまま自然と手が繋がれ、「母さん、行ってくるから」とおばさんに声をかけるとそのまま外に出た。



「大雅……?」


「ん? どうした? 早く行こうぜ」


「う、うん」



この繋がれた手の意味を聞きたいけれど、聞いたら離してしまうのかなと思うとなんとなく聞けない。


そのまま手を繋いだまま、わたしたちは花火大会のためにまず屋台が出ている会場に移動した。