────遡ること、二年。中学三年生の七月の終わり。
夏休みに入ったばかりのあの日、わたしは昼過ぎに大雅の家に行き、おばさんに浴衣の着付けをしてもらった。
紺色の生地に大きな花柄があしらわれた上品で大人っぽい浴衣。
お母さんと二週間ほど前に出かけた日に一目惚れして買ったものだった。
「はい、芽衣ちゃんできたわよ」
「おばさんありがとう!」
おばさんの声にそわそわしながらも、姿見の前に連れて行ってもらい鏡に全身を映してみた。
そこには普段の制服姿や私服姿は違う、ドレスアップした自分自身の姿。
本当はこんな大人っぽい浴衣がわたしに似合うのか不安もあったけれど、そんなのどこかに吹き飛んだ。
はじめてのお化粧までしてもらって、自分の姿のはずなのに見慣れなくてドキドキしてしまう。
浴衣に合わせて髪の毛も丁寧にアップスタイルにしてもらい、ドキドキが止まらなくておばさんには感謝しかなかった。
「すごい!髪も可愛くなってる!」
「芽衣ちゃんは元々綺麗なストレートだから普通にまとめるだけでも素敵だと思ったんだけどね? せっかくこんなに素敵な浴衣着るんだもの。お化粧もしたし、もっと可愛くしたいじゃない? 美容師さんじゃないから完璧にはできないけど、編み込みくらいなら私にもできるかなと思って」
鏡に映る自分の髪の毛をそっと手で触ってみる。
はじめての編み込みにテンションが上がった。