「芽衣」
「ん?」
「明日は夏期講習も無いし、どこか出かけるか」
「え、いいの? 大雅受験勉強で忙しいのに」
進学希望のわたしたち。その中でも大雅は難関大学を受験しようとしているため、毎日勉強で忙しいのだ。
確かに最近デートもまともにできていなくて寂しいとは思っていたけど。
でも勉強の邪魔にはなりたくない。
そんなわたしの不安をかき消すように、手を握る力が少し強くなった。
「たまにはいいだろ。……ほら、今日でちょうど一年になる、わけだし」
照れ臭そうな声に、安心したら思わず笑みが溢れた。
「うん、そうだね。一年記念だもんね!」
「そんなはっきり言うなよ。恥ずかしいだろ」
「なんで? いいじゃん、一年記念日! 大雅が覚えてくれてたなんて意外だったけど、嬉しい」
「覚えてるに決まってんだろ。もう芽衣に関することは、何一つ忘れないって決めてるんだから」
「ふふっ……嬉しい。ありがとう大雅」
大雅は、言葉通りどんなに些細なことでもわたしが言った言葉を覚えてくれていたり、わたし以上にわたしのことを覚えている。