「全部思い出した今なら、はっきり言える。俺が本当に好きなのは、芽衣だけなんだ。俺にとっては芽衣が一番大切で、芽衣しかいらない」


「たい、が」


「あの事故のとき、気が付いたら目の前が真っ暗で。芽衣が倒れてて、血が水溜りみたいにどんどん広がってて。生きた心地がしないって、ああいうのを言うんだなって思う。……俺のせいで、俺の代わりに芽衣がって思ったら、信じたくなくて。目の前で起きてることから逃げ出したくなって、それで全部忘れたんだと思う。……弱いよな、本当。それで芽衣のこと散々傷付けて。情けないよ」


「そんなことないよ」


「何度謝ってもたりないくらいなんだ。芽衣に酷い態度をとった俺のことなんてもう嫌いかもしれない。芽衣にとって、もしかしたら俺はいない方がいいのかもしれない」


「そんなっ」


「──だけど、やっぱり俺は隣に芽衣がいてくれないと落ち着かないし、ダメなんだ」


「……え?」


「芽衣。俺は芽衣のことが大好きなんだよ。昔からずっと。どうしようもないくらいに。許してもらおうだなんて思ってない。でも、俺は芽衣と一緒にいたい。芽衣の隣を一緒に歩きたい。くだらないことで笑い合いたいし、一緒に生きていきたい。できることなら、俺に芽衣の苦しみを半分背負わせてほしい」



……あぁ、きっとこれは夢だ。そうに違いない。


だって、こんな最上級の愛をもらえるなんて、とても信じられない。


でも、頬を撫でる風は生温いし感情が昂って胸が苦しい。


だからきっとこれは現実で、その事実がたまらなく嬉しい。


その反面、相貌失認になったことを今初めて悔しいと思った。


だって、こんな言葉をくれる大雅の表情がわからないなんて。悔しくてたまらないでしょう?


見たい。見たいよ。大雅が今どんな表情でそう伝えてくれたのか、今どんな顔をしているのか。見たいよ。


声だけじゃ、全部はわからないんだよ。


そう思ってしまうほどに、わたしは大雅のことが大好きなんだ。