大雅は奈子ちゃんと付き合ってるんだから、わたしは潔く身を引くべきだ。


今まで苦しめてしまった分、思い出してもらえただけでわたしは幸せだ。


わたしはわたしで頑張っていくから、大雅はどうか奈子ちゃんと幸せになって──



「芽衣は何も悪くないだろ!」


「……大雅?」


「芽衣は、ただ俺に思い出させようとしただけだろ。後遺症に苦しみながら、それでも俺に思い出してもらおうって。そう思っただけだろう?」


「……うん」



助けたことを感謝されたかったわけじゃない。


正直、二人とも生きているんだから今さらそんなのどうでもいい。


ただわたしは、また二人で笑い合いたかっただけ。二人で、また一緒に花火大会に行きたかった。それだけなんだ。



「それを芽衣が謝る必要なんてないんだ。芽衣は、ただ俺に教えてくれようとしただけ。何も悪くない。絶対に芽衣が悪いなんてことないから。それだけは、譲れない」


「……大雅は、本当に優しすぎるね」



ありがとう。わたしを否定しないでくれて、ありがとう。それだけで、わたしはこれから先も生きていける。


でも少しだけ。ほんの少しだけだけど。



「……奈子ちゃんが、羨ましい」


「え?」



ぽつりとこぼしてしまった心の叫びに、ハッとして口元を抑えた。