「ごめんっ! 本当に、今までごめん……! 謝っても謝りきれない。本当にごめん」



どうして、大雅はわたしに謝っているの?


全てがわからなくて、わたしはただ抱きしめられながら涙を流すことしかできない。



「芽衣、芽衣。あぁ、芽衣だ……!」



わたしの存在を確かめるようなその言葉と共に、わたしの肩にも冷たい何かが落ちてきた。


それが涙だとわかったとき、初めて大雅が泣いているのだと気が付いた。



「大雅……? 大雅なの……?」



ようやくそう問いかけることができたわたしの声は、ガクガクと震えていて。



「あぁ。大雅だよ」



顔を上げると、大雅がそっと頷いたのがわかる。


今の状況を理解しようと必死に深呼吸を繰り返した。



「なんで……? わたしのこと、忘れてたんじゃ……」


「全部、思い出したんだ」


「え……? うそ……!?」



……全部、思い出した?


つまり、大雅はわたしの存在とあの事故のことを、全て思い出したってこと?


なんでいきなり?どうして?


わたしのそんな気持ちが伝わったのか、大雅は



「龍雅に初めて胸ぐら掴まれて怒鳴られた。で、自分が逃げてるだけだって気づいた。もう逃げたくないって思って。それがきっかけで思い出したんだ」



と呟いて、さらに強く抱きしめてきた。


信じられなかった。何が起こっているのか理解できなかった。


だけど、二年ぶりに呼ばれたわたしの名前。


それだけで、今の話が本当なんだと思える。


思い出してくれたんだ。そう思ったら、もう涙を止めることなんてできなかった。