こうやって大雅のことを忘れて生きていくのが正解なのだろう。


そう思いながら日記を破り捨てたら、なんだかスッキリした気がした。


紫苑と龍雅と透くんにも、ちゃんと謝って改めてお礼をしなくては。


あの三人は特に私を心から心配してくれて、大雅がわたしのことを思い出せるように協力してくれたり見守ってくれたりした。


感謝しても仕切れないくらい、よくしてもらっている。



「……もう、ここに見にくるのも今日が最後だな」



呟く独り言は、誰にも拾われることがないまま地に落ちる。


だんだんと暗くなっていく空には、もうすぐきれいな花火が咲くだろう。


去年、大雅を想って一人で見にきた花火大会。


ここにきたら大雅が"芽衣!"って呼んできてくれるんじゃないかって期待してた。


だけど、そんなこと起こるはずもなくて。


虚しくて、悲しくて、切なくて苦しくて。


とても最後まで見られなくて、途中で帰ってしまった。


でも、今年は最後まで見たい。


もう、大雅とは一緒に観られないであろう綺麗な景色を、目に焼き付けておきたい。


こんなに綺麗だったんだよって。一緒に見れたらどれほど良かっただろうって。


心に刻みこむんだ。


時間が経つごとに思いのほか周りに人も増えてきて、二年前は穴場スポットだったのにと笑いそうになる。


こんな日に、こんなところで一人でいるのはわたしくらいだろう。


どうやらSNSでここから花火が綺麗に見えると噂になったらしく、今年はやけに人が多かった。