「これも、毎日よく続いたなあ」



家から持ってきた、わたしのこれまでの日記を開く。


つい一ヶ月ほど前までのページには毎日"今日も笑顔でおはようが言えた"としか書かれていない。


それが少しして、"今日はおはようが言えなかった"と変わってしまった。


でももう、こうやって毎日日記に文字を綴ることも無くなった。


しばらく何も書けなくなって、最後に書いた日記は、涙で文字が少し滲んでいた。



"もう、大雅に会いに行くのはやめる。わたしのエゴで大雅を苦しめるのはやめる。わたしが大雅を諦めれば、全部解決する。わかってたのに、それができなかった。でも、もう終わりにするから。大雅、ごめんね。今までありがとう"



それを書いた翌日から、大雅の元へおはようを言いに行くのをやめた。


でも習慣づいてしまったからか、全然それに慣れなくて身体が勝手に大雅の家の前で待とうとしたりもする。


その度に"違う、もうダメなんだった"と思い直して泣きそうになりながら学校に行くのだ。


朝は大雅が家を出てからわたしも出ようかと思った。だけど、そうすると奈子ちゃんと大雅が一緒に学校に向かうところを後ろから見ることになる。


それが嫌で、毎朝早めに家を出た。


紫苑が先に登校しているわたしを見てどうしたの!?と心配してくれたのも記憶に新しい。


日記を読みながら、一ページずつゆっくりと別れを告げるように破いていく。周りからの視線なんて全く気にならない。


一つ一つ噛み締めながら、最後のページをゆっくりと破ったあと。


全部の紙を一つのボールのようにぐしゃぐしゃに丸めて、近くにあった自動販売機の横にあるゴミ箱に捨てた。