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「二年か……長かったな……」
高台の、景色がよく見えるポイントに立って夕焼けを眺める。
結局あの後、龍雅は「わかった。でも無理だけはしないで」と言って私の頭を撫でてから帰って行った。
弟のように思っていた龍雅が、いつのまにか男の人になっていることに気付いて少し恥ずかしくなる。
そのひどく優しい手の温もりが、まだ頭に残っているような気がした。
その後ろ姿を見送りこの高台へやってきた私は、高台からの景色を眺めながらこの二年間の日々を改めて思い返してみた。
つらかった。苦しかった。何度泣いたかわからない。
だけど、命の尊さを知った。
当たり前の日常がどれほど素晴らしくてありがたいものだったのかを知った。
心が揺さぶられるほどの人の温かさを知った。
苦しくてたまらない中でも、お互いを信じられる人たちがいると知った。
わたしを支えてくれる人たちがいると知った。
温もりと優しさを分け与えてくれる人がいると知った。
それは、生きているからこそ知れたこと。後遺症を患ったからこそ知れたこと。
わたしにとって、これは何よりも大切な人生の財産だと思う。