「龍雅にはたくさん迷惑かけちゃったよね。こんな結果になっちゃったけど、本当に感謝してる。わたしの気持ちを否定しないでくれて、協力してくれて本当にありがとう」



お礼を告げると、龍雅は言いにくそうに口を開いた。



「芽衣は、それでいいのか?」


「え?」


「これで本当に兄ちゃんとさよならして、後悔しない?」


「……」



龍雅に視線を向けると、その表情はわからないけれどこちらを向いているのはわかった。


きっと、真剣な眼差しでわたしを見つめているのだろう。


その目を見つめ返し、深呼吸をする。



「後悔しないって言えば、嘘になる。だけど、もうこうするしかないから」


「……」


「龍雅は聞いた? 大雅にね、彼女ができたんだって。奈子ちゃんっていう大雅と同じクラスの女の子なんだけどね。

……その子に言われちゃったの。もう大雅に付きまとうなって。大雅の大切な人にそう言われちゃったら、もう諦めるしかないじゃん」


「それ、兄ちゃんには確かめたのか? 彼女ができたって。本人からちゃんと聞いたのか?」


「ううん。だって、今の大雅がわたしにそんなこと教えてくれるわけないし、聞けたとしてももっと自分が惨めになるだけだと思う。

それに、あの二人は毎朝一緒に学校に行ってた。奈子ちゃんが大雅と付き合ってるんだって言ってた。もう、それが全てだよ」



あぁ、ダメだ。また泣いてしまいそう。


涙腺が崩壊しないように目に力を入れる。


諦めたつもりだった。だけど、まだ心は叫んでる。


大雅。大雅。どうかわたしのことを思い出して。


どうか大雅の隣にいさせて。


でもそれを口に出してしまったら、また大雅が遠くなってしまう。


だから、わたしは口を閉ざすことしかできないんだ。