放課後、わたしは委員会に出席している紫苑を教室で待っていた。
他のクラスメイトは皆すでに帰っていて、わたしは一人で窓の外に視線を向ける。
雲一つない快晴の空が綺麗で、窓から入る風が心地よい。それを見ていたらわたしの悩みなんてちっぽけに感じた。
こんなにも綺麗なのに、もうすぐ梅雨入りなんて信じたくないな……。
「……芽衣」
ふいに扉の方から聞こえた声に、びくりと肩を跳ねさせて視線を戻す。そこには一人の男子生徒がいて。
「ごめん急に話しかけて。びっくりした?」
「……透くん?」
「うん。久しぶり」
聞き覚えのある声の正体は、中学からの友達の横浜 透くんだった。
大雅とはタイプの違うさわやかなイケメンだと名高い男の子で、中学時代からの大雅の親友だ。
柔らかい目元が印象的な、見た目通りのさわやかで優しい男の子。
今年も大雅と同じクラスのはず。だから同じく透くんとも学校内ですれ違うことはほとんどない。
だから考えてみると透くんとまともに喋るのは中学のとき以来で、なんだか緊張してしまう。
見た限り近くには大雅の姿は無く、わかりやすく脱力してしまうわたしに透くんはクスクスと笑った。