最初は、呆れたような声色だった。
それが次第に、迷惑そうなものに変わる。
『……またいんのかよ。しつけぇな』
『うん、ごめんね大雅。でもわたし、どうしても思い出してほしくて』
『だからお前のことなんてしらねぇって言ってんだろ!?』
そう怒鳴られても、涙がこぼれそうになっても。
『……うん。そうだよね。ごめんね』
そう、謝ることしかできなかった。
同じころ、学校で話しかけてきた透くんに聞いた。
『大雅さ、芽衣の話をされたり顔を見たり、芽衣の存在に触れると頭痛が酷くなるらしいんだ』
『頭痛?』
『そう。多分、頭の中で思い出したい大雅と思い出したくない大雅が戦ってるんだと思う。だから、頭痛でイライラして芽衣に酷いことも言っちゃうし、頭痛に悩まされるくらいなら思い出したくないんだと思う』
『そっか……』
よく頭を押さえているとは思っていた。だけど、それが頭痛によるものだなんて気が付かなかった。
表情がわからないと、そんな簡単なことにも気が付かないのか。
わたしの顔を見るたびにもしかしたら大雅の表情は苦痛にゆがんでいたのかと思うと、心がえぐられるような感じがした。