助けようと勝手に行動したのはわたしなんだ。


大雅はあのとき、周りをちゃんと見ていなかった。だけどそれは、全部わたしのため。わたしのために急いでくれていたんだ。だから、事故の原因はわたしにもあるんだ。


大雅が記憶を失うほどに悩み後悔する必要なんてないんだ。


わたしはただ、また二人で笑い合いたいだけなのに。


表情がわからなくたって、大雅と一緒に笑い合えたら他に何もいらないのに。




『……諦めたくない……。わたしは、どうしても大雅に思い出してもらいたい……』



また一緒に、隣で笑い合いたい。


あの日見られなかった花火を、一緒に見に行きたい。


そのためには、思い出してもらうんだ。


大雅を苦しめてしまう。もしかしたら思い出せないまま、大雅にもっと嫌われるかもしれない。


思い出してもらいたい。だけど、この相貌失認のことは知られたくない。


そんなの、自分勝手だってわかってる。



それでも、何もしないで後悔はしたくない。


大雅に存在を忘れられるくらいなら、嫌われてもいいから、大雅の記憶の中に少しでも残りたい。


もう、"わたし"という存在を忘れてほしくない。


どんな形でもいい。なんでもいい。大雅の頭の中に、ほんの少しでもいいから"わたし"をとどめておきたい。


……うそ。そんなのは建前で。これはわたしのただのわがまま。


嫌われたくない。忘れたままなんて嫌だ。


本当は、また前みたいな関係に戻りたい。


ごめん。ごめんね、大雅。


わたし、また大雅を苦しめてしまう。


わたしの自分勝手で、大雅を傷つけてしまう。


だけど、諦められないの。


出た答えはシンプルで。そして、それからの日々は覚悟していたとは言え、とても残酷なものだった。