わたしが助けたことによって、大雅を苦しめてしまったのだろうか。


わたしは間違ったことをしたのだろうか。


助けない方がよかった?……ううん、そうしたら大雅は無事では済まなかっただろうし、わたしは一生そのことを後悔し続けるだろう。


だけど、助けたことで今度は大雅が苦しんでいる。


間違いだったとは思わない。だけど、それを大雅が自分のせいだと思って記憶を手放してしまったのだとしたら?


正しかったとも言えないのだろう。


わたしは何も言えなくなってしまった。


わたしは大雅の顔がわからない。


大雅はわたしの存在がわからない。


何の因果なのだろう。


嫌われた方がまだマシだったかもしれない。


忘れられてしまったらもう、何もできないじゃないか。


わたしは一体どうすればいいのだろう。


何日もかけて考えた。考えたけれど、答えなんて出なかった。


もし大雅が全てを思い出したときにわたしがそばにいたら、もっと大雅を苦しめてしまうのではないか。


じゃあわたしは大雅の前から姿を消した方がいい?


その方が大雅は幸せになれる?でも何かの拍子で思い出したら?


大雅のために私が姿を消したと知ったら、大雅はどう思う?


その方が大雅を苦しめることになるのでは?


でもそれじゃあ、もしこのまま一生記憶が戻らなかったら?


わたしの中には、大雅との数えきれないほどの思い出があるのに。


わたしの中には、確かに大雅との日々が色濃く存在しているのに。


わたしの中には、"永原大雅"という人物が確かに存在しているのに。





──わたしは、一生大雅の中で"存在しない人"として生きていくの?




わたしは、一生大雅に会えないまま生きていくの?


……そんなの、悲しすぎるよ。