涙が混ざったようなその声に、俺の心が揺さぶられる。
ありがとう、透、紫苑。本当にありがとう。
俺のせいで傷付いてきた芽衣を一番近くで見てきたはずの紫苑は、本当は俺のことなんて大嫌いだろう。
本当は俺に芽衣を救ってあげてだなんて、言いたくないだろう。
俺を励ますことなんて、したくもないだろう。
だって、できることなら自分が芽衣を救ってあげたいはず。そうだと信じて紫苑は芽衣と一緒にいたはずなんだ。
透も、俺のことなんて見捨てても良かったはずなのにずっと一緒にいてくれた。
"また今年も同じクラスだな!"って、毎年笑顔で俺の背中を叩いてくれた。
呆れたこともあっただろう。怒鳴りたくなることもあっただろう。やるせない気持ちになったことも何度もあるだろう。
でも、紫苑も透も、芽衣のことを俺に託してくれた。
その意味を、俺はよく噛み締めないといけない。
目から溢れ出す涙を拭い、二人に片手を上げてから深く息を吸ってあの場所を目指す。
花火大会は何時までだっただろうか。
それが終わるまでに、俺は芽衣を見つけられるのか?
いや、そもそも見つけたところでどうする?俺は芽衣に一体何を言うつもりなんだ?
どうすれば芽衣の心を救える?笑顔を取り戻すことができる?
そんな不安と葛藤が頭の中を駆け巡るけれど、俺の身体を動かしているのは
"とにかく芽衣に会いたい"
その一心だった。
会ってどうするかとか、何を言うかとか。
そんなことは今は考えられないし、正直考えたところでどうにもならないだろう。
とにかく今は、芽衣を探さなければ。
二年前に目指した場所へ、俺はひたすら、前だけを見て走り続けて行った。