そのままダラダラとお昼まで授業を受けて、昼休みになると紫苑がわたしの席まで来てくれる。



「芽衣、食べよ」


「うん」



お弁当を広げて二人で食べ始めると、



「────いが? 待てって」



不意に廊下から大雅という名前が聞こえた気がして振り向いた。



「ん? どうかした?」


「……ううん。大雅がいたような気がしたんだけど……」


「んー……昼休みだし購買にでも行ったんじゃない?」


「あぁ、そっか」



その姿は見つけられずにまたお弁当に視線を戻した。


大雅は中学の時からキリッとした顔立ちと優しい性格で女の子に人気があった。


奥二重の切長の目がかっこいいと評判で、高校に入ってからはその人気がさらに上がっている。


そんな人気者の大雅とわたしがまともに会話できるのは朝しかなくて、学校では全く隙が無く一切話しかけにいくことは無いし、クラスが離れているからそもそも校舎ですれ違うことすらあまり無い。


だからこうして大雅の影を感じると、身体が勝手に反応してしまうのだ。


そんな調子だから、同じ学年の人でもわたしと大雅が幼馴染で今複雑な関係にあるということはほとんど知らないだろう。