「大雅。嘘じゃない。俺や紫苑じゃダメなんだよ。俺たちは芽衣を支えることはできるけど、救うことはできないんだ。芽衣にはお前じゃなきゃダメなんだよ」
「透……」
俺じゃなきゃ、ダメ。
その言葉が、スッと胸に染み込む。
一度大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと透の手を掴む。
グイッと立ち上がらせてくれて、背中をポンと叩いてくれた。
「芽衣は、今もずっと大雅を待ってるよ。毎年、花火大会は大雅と見るはずだった場所で一人で見てる」
「花火大会……って、まさかっ」
頭に浮かぶものは、今日の日付だ。
「うん。今日も。一人で行ってる。いつかまた、大雅と一緒に見たいからって。ずっと待ってるんだよ」
それを聞いた瞬間、俺の身体は勝手に動き出した。
「詳しい場所は聞いてない。だけど、芽衣は大雅と行くはずだったところなんだって言ってた」
二年前、一緒に見ようって約束して向かっていた、穴場スポット。
確か、町外れの高台だって言ってた……はず。
「行ってあげて。お願い、芽衣の心を救ってあげて」
走り出す瞬間、後ろから
「……大雅! 頑張れ! もう逃げんなよ!」
と透の叫び声が聞こえた。