「芽衣は、今もずっと待ってるよ」


「……でも、俺は」


「芽衣に一度だけ、聞いたことがあるの。"どうしてそんなに頑張れるの?"って。
そうしたら、
"また大雅と一緒にくだらないことで笑い合いたいんだ"って言ってた。

大雅の顔がわからなくても、大雅自身は何も変わってないって。確かに酷いことも言われたけど、それは大雅が自分自身の心を守っているだけで、根本的な部分では昔のまま優しい大雅から何も変わっていないから、どうしても諦められないんだって」



違う。俺はそんな、優しいやつじゃない。違うんだ。


芽衣を忘れて、傷付けて、泣かせて。最低なやつなんだ。



「大雅に思い出してもらって、また笑いながら今度こそ一緒に花火大会に行くんだって。そう言ってた。それくらい、芽衣は大雅のことが大好きなんだよ」


「……っ……」



俺だって……。俺だって、そうだよ。


生まれた時からずっと一緒で、ずっと隣にいて。


俺にとっては芽衣が一番大事で、芽衣のことが大好きで。


……でもこんな俺が、今さら芽衣に何ができる?


芽衣を傷つけた俺が、今さら芽衣に何を言う?
俺は、俺には、そんな資格は──



「……ねぇ大雅。お願い」


「……」


「……芽衣の笑顔を、取り戻して」


「え、がお」


「あの事故があってから、芽衣は無理して笑うようになった。今も昔も、本当の意味で芽衣を笑顔にできるのは大雅しかいないの。大雅にしかできないの」



嘘だ。そんなの嘘だ。


俺には何もできない。そう思うのに。


おもむろに透が立ち上がって俺の前に来て、そっと手を差し出した。