「……俺は……俺は……」



呟いた時、突然頭の中に、この二年間の芽衣とのやりとりが浮かび上がってきた。



『……あ?てめぇ、またいんのかよ。ストーカー女が』


『おはよう!大雅』



思えば、毎朝先に口を開いたのは俺だった。


芽衣は必ず平日は毎朝俺の家の前で待っていた。けれど、決して芽衣から俺に話しかけてくることはなかったんだ。



「……そうだ。芽衣は確かに俺のことを待ってたけど、いっつも俺が先にあいつを見つけてた……」



いつも待ち伏せしてる姿が目に入ると思わず声が出てしまって、それにびくりと肩を震わせてから笑顔を作る芽衣をうっとうしくさえ感じていた。


もしかして、あれは俺の声を聞いて初めて俺だと認識していたのか……?



「当たり前だけど、学校では人が多くて皆同じ制服を着ているから、芽衣は誰が誰だかわからなくなっちゃうの。

いくら声で聞き分けられるって言っても、人が多すぎるとどうしても難しい。突然髪型を変えたりする人もいるから判別しにくい。それに、顔がわからないって想像以上にストレスがすごいみたいで、芽衣は極力顔を見ないように下を向いて歩くことの方が多くなった。

だから、芽衣は学校では大雅を見つけられなかった。話しかけるどころか、大雅とすれ違っても声が聞こえなければそれが大雅だってわからなかった」



だからいつも、学校では話しかけられたりすることはなかったのか……?