「……芽衣は、大雅に知られるのを怖がってる」
「なん、で」
「"知られたら大雅が苦しむから"って」
「俺が、苦しむ?」
「うん。これ以上大雅を苦しめたくないから、言わないでほしいって。
……でも、わたしは大雅も知るべきだと思う。ううん、知っておかなきゃいけないことだと思う。
だけど、それは大雅を責めてるわけじゃない。わたしたちも、芽衣も。誰も大雅を責めるつもりはない。それだけはわかってほしい」
「……俺も、大雅が記憶を取り戻したなら知っておくべきことだとは思う。だけど俺は、それで大雅がまた……」
「どういう意味だよ……事故以外にも、芽衣に何かあったのか? それに、俺が関わっているのか?」
心臓が、痛いくらいに脈打っている。
二人は何を言っているんだ。
怖い、聞きたくない、でも、俺も聞かなきゃいけない。絶対に聞かないといけない。
紫苑と透の顔を見ればそれが良い話なんかじゃないことくらい、一目瞭然だ。でも、今聞かないと俺は一生後悔する気がした。
何度でも胸に刻む。もう、俺が逃げる事は許されないんだ。
紫苑が口を開くまでの数秒間が、俺には何時間にも感じられて胸の嫌なざわめきが止まらなかった。