「皆座れー、ホームルーム始めるぞー」
紫苑の優しさに感謝しているうちに担任の先生が教室に入ってきた。
「また後でね」
「うん」
紫苑に手を降り、席に戻るのを見つめる。
「おいおいお前ら、もうすぐ梅雨入りするからってやる気なさすぎねぇかあ? 遅刻も多いし皆眠そうだな」
「だってだるいじゃーん。それに先生だって昨日遅刻してたくせに。人のこと言えないでしょー」
「うるせ、だから今日は必死で早起きしたんだよ。じゃあホームルーム……始めようかと思ったけどやっぱ面倒だから連絡事項だけにしとくかー」
「やっぱり先生が一番やる気ないじゃん。まだ五月病なんじゃないの?」
先生とクラスメイトの男の子の掛け合いで教室内に笑いが起こる。
そのまま連絡事項だけを伝えて先生は教室を出ていき、その後すぐに予鈴が鳴った。
授業が始まると黒板をじっと見つめ、そこに板書するおじさん先生に目をやった。
……はぁ。
ため息が出てしまうのは、目の前の数学の授業がつまらないだけじゃない。
チョークがカツカツと音を鳴らしながら白い線を描くのを横目に、わたしはルーズリーフに板書を写してから窓の外に視線を向けた。
……もう、夏か。
じりじりと照りつけるような太陽が今日も朝から暑い。