「……もしもし」


『大雅か!? やっと出た!』


「悪い、ずっと連絡無視してて」


「んなこと今はいいんだよ! そんなことよりお前、記憶が戻ったって……!』



電話の相手は透で、誰かから聞いたのか声はひどく慌てていた。



「……あぁ」


『今どこにいんの? 俺お前ん家の前で龍雅に会って教えてもらって。すぐそこ行くから!』


「今は……病院の前。偶然紫苑にも会って。それでしゃべってたところ」


『わかった、すぐ行くからそこ動くなよ!』



ぶつりと切れた電話をそっと見つめていると、



「透?」



と紫苑が不思議そうに首を傾げた。



「あぁ。透からの連絡もずっと返事してなくて。今からここにくるって」


「そっか。わたし、いない方がいい?」


「いや。……二人にちゃんと話したいから、いてほしい。この後時間もらえるか?」


「うん」



言葉通りすぐ走ってやってきた透に怒鳴られつつも、俺たちは病院横にあるカフェのテラス席に腰掛けた。


カフェラテを飲みながら、向かいに座る二人の顔を見比べてゆっくりと口を開く。


二人に、芽衣に言われとこと、龍雅や母さんとのやりとりを少しずつ話した。


そしてそれがきっかけで記憶を取り戻したことも。


頭の中を整理するのに時間がかかり、学校に行くのも億劫だったこと。透にもどんな顔をして会ったらいいかわからなかったこと。


彼女ができたという噂は奈子が勝手に流したもので、俺には彼女なんていないこと。


それが原因で、芽衣は勘違いしてあんなことを言ってしまった可能性があるということ。


全てを話し終えると、紫苑はいつのまにか泣いていて透の目にも光るものが見えたような気がした。