僕らに明日があるなら

四月はあっという間に過ぎて、二泊三日の修学旅行がやって来た。
「皆、お菓子、何、持ってきたの?」
「俺は」
「私はね」
集合時間までの時間、早く来た人から友達と集まっていた。
私も和貴達と集まっていた。
「俺達、皆、クラス違うから、自由時間まで、会えないよな」
「メールでやりとりしたら、いいだろ。俺、バスの席、一人だし」
「私も一人だから、やりたいな」
「そうだな。俺も一人だ」
「同じく」
「じゃあ、決まりだな」
「和貴、グループ作っとけよ」
「ああ」
「自由時間、何時からだっけ?」
「14時だ。お参り、行くからな」
「点呼するから、クラスごとに並んで!」
クラスごとの整列が始まった。
「また、後で」
「ああ」
「自由時間で」
「うん」
私達も別れて、それぞれのクラスの列へと整列した。
バスに乗り込むと携帯の通知が鳴った。
『グループ幼馴染』
和貴がメールの部屋を作ったんだ。
「作ったから、いつでも、話せるからな」
私も入ろっと。
「和貴、ありがとう」
私の次に奏斗がグループに入ってきた。
「何、話す?」
すると、洸と潤も合流して来た。
「ホテルの自由時間、何するかとか?」
「俺、トランプ持ってるけど、夜、やる?」
「やろう!交流室に集合な!」
トランプか。皆でやるの、いつ振りだろう。
「了解」
「分かった!」
それから、一時間ほど、話は弾み、奏斗と潤が仮眠をとるとメッセージが入り、解散した。
あっという間に修学旅行か。
気づいたら、夏になって、秋になるんだ。
私は、段々と身体が動かなくなって、冬になって、次の春には、もう、私は、ここには、居られない。
その実感は、まだ、無い。
だけど、受け入れないといけない運命だから。
そんなことで、頭がいっぱいになる。
私も、少し、寝ておこうかなと思い、目を閉じる。
夢をみていた。
また、真っ暗な部屋に私は座りこんでいた。
そして、天使が舞い降りて、いつものように、私の手を取った。
「迎えに来た」
いつもと同じ言葉。
「まだ、行けない」
私もいつものように、天使の手を振り払う。
「時に争えば、定めが狂う。...また、迎えに来る」
といつもとは違う言葉を残して、天使は、消え、私は目覚める。
時計を見ると、少しのつもりだったのに、三時間ほど、眠ってしまっていた。
それより、天使のあの言葉は一体、どういう事?
そして、急に胸が締めつけられる。
「うっ...」
朝、薬も飲んだのに。
私はポーチから薬を出した。でも、その時、胸の締め付けは緩んだ。
もう、残された時間は、秋まで、無いかもしれない。
私は、お茶を出し、薬を飲んだ。
外を見るとバスは高速を降り始め、普段、見ない町の景色が広がった。
皆と笑って、楽しんで、ただ、今、この時を過ごそう。