うちの高校はクラス替えがないから、進級しても顔ぶれは変わらない。私たちも相変わらず四人で過ごしていた。
 七月上旬には怜南の誕生日がある。宗像くんと過ごす初めての誕生日だと嬉しそうにしていたのに、彼に用事ができてしまったと落ち込んでいた。だから怜南を励ますためも兼ねて誕生日パーティーを提案し、私が幹事を務めることになった。

「もうお店とか決めちゃった?」

 怜南に訊かれたのは、誕生日の一週間前だった。

「昨日いいお店見つけたから、今日みんなに見せようと思ってた。みんながよければ予約しとくよ」
「そっかあ……。うん、じゃああとでグループトークに送ってよ」
「わかったよ」

 すぐにお店のURLを送り、三人から了承を得てすぐにネット予約をした。
 そして迎えた怜南の誕生日。
 私が予約したのはカラオケだった。いつも行っているカラオケではなく、部屋の装飾もメニューもちょっと豪華で、バースデープランがあるからお店側でケーキやパーティーグッズを用意してくれる。カラオケが大好きな怜南の誕生日パーティーに最適の場所だと思った。

 日曜日だったから現地集合にして、プレゼントとメッセージカードが入ったバッグを抱えてカラオケに入った。予約名を告げて部屋に案内される。三人はまだ来ておらず、少しドキドキしながらドアが開くのを待った。
 だけど十分が過ぎても一時間が過ぎても来ない。メッセージを送っても返ってこない。既読にすらならない。電話をかけても出ない。なにがなんだかわからず、だけど入れ違いになったら困ると思った私は動くに動けず、三人が来るのを待っていた。
 だけど、どれだけ待っても、三人が現れることはなかった。

 覚束ない足取りで帰宅し、疲れてもいないのに起きていられなかった私はベッドに倒れ込んだ。なんの気力も湧かないのに、心臓だけはノイズが走っているみたいに騒がしかった。
 私が時間と場所を間違えたわけじゃない。だって予約したのは私なのだ。
 三人が時間と場所を間違えたのかもしれない。だけど、メッセージすら来ないのはどう考えたっておかしい。事件や事故に巻き込まれたのかもしれない、なんてこの状況下だともはや現実逃避でしかないし、なにより心配する余裕は微塵もなかった。

 考えを巡らせれば巡らせるほど、嫌な予感しかしない。
 答えを知る方法がひとつだけある。インスタだ。
 三人は頻繁にインスタを更新する。友達や彼氏と遊んだ日はもちろん、学校での些細な出来事、新しいメイク用品やネイル、身近なことをなんでも。ましてや今日は怜南の誕生日だ。不慮の事態が起きたわけでもない限り、絶対に更新する。
 どうか考えすぎであってほしいと祈りながら、恐る恐るインスタを開くと、嫌な予感が的中していた。

 上部には、怜南とナナミちゃんとミカちゃんのアイコンが並んでいた。それだけで真相がわかっていた。それでも私は、まるで絶望の沼へ導かれるように指先を伸ばしていた。
 画面上部にある線は点と言ってもいいほど細かく途切れていて、大量に投稿されているのだとわかる。そこには怜南たち──つまり、私以外の三人がいつものカラオケで楽しそうにはしゃいでいる姿が映っていた。
 画面が切り替わるにつれて、宗像くんと、他にも見覚えのある男の子がふたりいることがわかる。ナナミちゃんとミカちゃんの彼氏だ。
 あまりにもショックで、呆然として、混乱して、それぞれの彼氏を招いて怜南の誕生日パーティーを開いたのだと理解するまで数分を要した。