二年になるとクラスが離れたけれど、私たちの仲は変わらなかった。廊下で会えばもちろん話をするし、シノが新しいクラスに馴染めないと言うから、休み時間はお互いの教室を行き来して、昼休みも一緒に過ごした。
進級して二か月が経った頃、シノは急にクラスの女の子たちと仲よくなったようだった。うるさくてけっこうみんなに嫌われていてモテ自慢かよってくらい男の話ばっかりして馬鹿っぽくて普通に引く、と散々揶揄していた子たちと。
なぜあれほど嫌っていた相手と急に仲よくなったのか不思議に思いながら過ごしているうちに、いつしかシノは前ほど私のところに来なくなった。とはいえ来るときは来るし、それほど気にしていなかった。
むしろほっとしている自分もいた。休み時間のすべてと言ってもいいほどシノと過ごしていた私は、いまいちクラスの女の子たちと打ち解けるタイミングを掴めずにいたからだ。それに仲よくなったならあの子たちの悪口も言わなくなるだろう。
──なんて思っていた私は、たぶん能天気だった。
休み時間を教室で過ごす時間が増え、やっとクラスの女の子たちに馴染めてきたと安心していた矢先、ある日突然シノに無視をされるようになった。話しかけてもそっけない態度、という段階を飛ばして、完全なる無視を。
なにか気に障ることをしてしまったのかもしれないと考えてみても、思い当たる節がない。なぜならほんの二日前に遊んで、いつも通りたくさん話してたくさん笑って、また月曜日ね、と笑顔で別れたからだ。
シノの態度に我慢できず、一度だけ、ついカッとなって肩を掴んだことがある。
だけど、
「触んじゃねえよ」
睨みつけられた挙げ句思いきり舌打ちをされてしまった。
さすがに深く傷ついた私は、以降、シノに声をかけることができなくなった。
シノが学年の女の子たちに私のことを吹聴したのか、次第に同じクラスの子にも無視されるようになり、私はあっという間にひとりになった。ただ廊下を歩いているだけで『男好き』『裏切り者』などと言われるようになった。楽しかったはずの学校生活は地獄と化した。
ここまでされるなら、私がなにかしてしまったに違いない。だけどいくら考えてみても、シノが怒っている理由も『男好き』や『裏切り』にも心当たりがなく、ただただ混乱することしかできなかった。
学校は休まなかった。いじめなんかに負けたくなかった。
それに、休むとなるとお母さんに理由を言わなければいけない。
学年中の女の子に無視されているなんて、言えるわけがなかった。
こんなのずっと続くわけじゃないと自分に言い聞かせ、意志に反して竦んでしまう足を毎日学校へ運んだ。