「あやかし王~、ここにおられましたか。探しましたよ」

 肩を上下させてフラフラになりながら近付いてきた男がいた。

 見た目は人間にそっくりで、猫目の大きな瞳に栗茶色のふわふわの髪の毛。整った顔立ちをしているが、濃紺色の和服から長い尻尾が飛び出ている。

 青年のように見えるが、歳は二百歳。

しかしながら、あやかし国の中では比較的若い方だ。

 あやかし王と呼ばれた男は、気だるげに振り返る。

 漂う気品と威厳は、他を圧倒する迫力がある。それに、他のあやかしの住民と違って、見た目は完璧な人間だった。

 力の弱い者は、姿が妖魔に近づいてしまう。

よって、あやかし王に話しかけてきた男にも尻尾がついているように、動物の耳のような物がついている者、手に鱗がついている者など様々だ。

完全なる人間の姿をしたあやかし王は、それだけで強大な力を有していることが分かるが、顔立ちが精巧な人形のように整っていた。

圧倒的な美しさは、美が尊ばれるあやかしの国では優位な証だった。