もんじゃも食べ終わり、帰って、眠りにつく。だが、危機は確実に迫っていた。
朝、誰かからの電話で目を覚ました。いや、まだ朝ではない。夜が明けていない。まだ4時前だ。こんな時間に、ゲンから電話が来ていた。
「はい…。なんだよこんな時間に…。」
『大変だ!空見ろ!空!』
「空?」
一体空がなんだってんだ。カーテンを開けると、そこには驚きの光景が広がっていた。
何かが空を飛んでいる。とんでもなく大きな、長い『何か』が。
「なんだこれ…。」
『竜だよ!」』
「…おい、え?まさか…は?」
『…倒してもらいたい。』
「はあああ!?あれを!?飛んでんじゃん!え!?」
『お前、1回だけなら倒したことあるだろ?まあ、俺もいたけど…。…一応モナちゃんにも声かけといたから…頑張って。』
その途端、ブツっと電話が切れた。携帯と空を交互に見る。
いや、ありえない。竜だぞ?
でも…たまにいるんだよなぁ。ああいう、変化しちゃうやつ。なんなら父さんもそのタイプだった。狼だとか大蛇だとか、なんかそういう凶暴系。うわーマジかーあれを?え?嘘でしょ?
俺とゲンが倒したのは、小型のもので、30年に一度、必ず現れるものだった。でも、今回は違う。大型よりもさらに大きい、超大型。確か、100年に一度現れるもの。これを見ずに死ぬ人もいる、珍しい竜だ。
とりあえずいつもの服に着替えて、準備を整える。
ピンポーン
チャイムが鳴った。ドアを開けると…。
「大変だよ!竜が出たー!」
「…うん、知ってる。」
案の定、モナのお出ましだ。家に招き入れ、俺はとあるノートを探す。
「どうすればいいの?あんな大きなもの、倒したことないよ!」
「落ち着いて。竜はすぐに降りてこない。今は落ち着いて準備を進めよう。」
「…なんか急に教育係っぽくなった!?」
「そりゃどーも。」
「…あの机の上にあるおにぎりは?」
「腹が減っては戦はできぬ。俺が握ったのでよければどうぞ。」
「やったぁ!お腹すいてたんだよね〜。」
おにぎりを見て安心したのか、すっかり上機嫌で頬張り始めてしまった。やっぱりあいつ、精神年齢低いと思う。
一方こちらも、探していたものを見つけた。ある時ゲンからもらったノートで、倒し方的なのが細かく書かれている。一番最後のトピックスが、やはり『竜』だった。
前に倒した時は8年前。流石に忘れているので、思い出したかったのだ。机にノートを置き、おにぎりを食べながらモナと読み込む。
基本的なやり方は変わらない。体術や障害物を使って相手の体勢を崩し、中に入って握り潰す。問題は、どうやって竜の体勢を崩すかだ。強引にしがみついたところで弾き飛ばされるのがオチだ。何か致命傷を与えてからの方が安全で確実。
その横に、ゲンの字でメモが書かれていた。
『竜は逆鱗を刺せば動けなくなる!』
逆鱗とは、竜の顎下付近にある、一枚だけ逆さに生えたウロコのこと。
「じゃあそこをグサッと…!」
「どうやって?相手は飛んでるじゃん。」
「ん〜…飛び乗る?」
「無謀だろ〜…。」
「前はどうやったの?」
「…小型だったから、そんなにウロコも硬くなくて、銃とかでチクチクダメージ与えてたらたまたま逆鱗に当たって落ちた。」
「でも今回は…。」
「大型なんだよなぁ…。」
「…飛び乗る?」
「…しかないかもな。別に触り続けられればいいんだし。」
「じゃあ私がやるよ!私の方が速く握りつぶせるでしょ?」
「まあ、確かに…。そこらへん、ためらわないからな。じゃあ、俺が囮になる。モナが飛び乗って倒せ。」
「りょーかい。」
おにぎりを腹に流し込んで、外へ出る。もうすぐ夜が終わる。
準備体操してから、俺は目立つ場所へ。モナはこの街で一番高い、展望台へ向かった。
ここでしくじれば、多分この街の人間は全滅する。それどころか、全員に危害が及ぶ。なんとしても、ここで終わらせないと。さっきよりも低空を飛ぶ竜を睨んだ。
正直、この作戦はかなり危ない橋を渡っている。もしかしたら死ぬかもしれない風前の灯だ。モナから電話がかかってきた。
『着いたよ。』
「どんな感じ?」
『結構近い。でも、もう少し上を飛んでる。』
「りょーかい。じゃあ始めようか。」
『…コウ。どうしよう…。足が動かないや…。あれ?大丈夫だと思ったのにな〜…あはは…。』
「…ビビリ。」
『はぁ!?ビビってないし!大丈夫だし!』
「よし、じゃあやるぞー。」
『……生きて帰って来れたらいいね。』
「だな。…よーい……スタート。」
まずは俺から。持っていた懐中電灯の灯りをチカチカさせて、できるだけ気を引く。竜はちらりとこちらを見た。あいつ、目がいいんだろうなぁ。…人間だって気づいて、すぐに飛んで来たんだけど。
「うわ、でっけー…。」
必死に展望台の方へ走る。が、それより速く追いつかれた。すぐ後ろに竜の口がある。ぱくぱくしながら、建物を壊しながら突き進んでくる。
いつも、ゲンのいる場所へ使っていた近道が、こんな使われ方する日が来るなんて…。
ただ走った。仕事のために、自分が死なないために。
どれだけ走っただろう。展望台が近い。
ここが勝負!高い建物から思いっきり跳躍して、展望台の開いている窓から中へ入った。もちろん窓をくぐれない竜は展望台に激突した。頭を強く打ちつけ、怯んでいる。食べられないように細心の注意をしながら、モナを待つ。
「うああぁ!」
情けない悲鳴と共に、モナがボトッと落ちてきた。竜のツノとツノの間だ。
すぐに手のひらをくっつけた。
よし!
ガアアアアアァァァ!!
…が、竜はそんなものではなかった。
朝、誰かからの電話で目を覚ました。いや、まだ朝ではない。夜が明けていない。まだ4時前だ。こんな時間に、ゲンから電話が来ていた。
「はい…。なんだよこんな時間に…。」
『大変だ!空見ろ!空!』
「空?」
一体空がなんだってんだ。カーテンを開けると、そこには驚きの光景が広がっていた。
何かが空を飛んでいる。とんでもなく大きな、長い『何か』が。
「なんだこれ…。」
『竜だよ!」』
「…おい、え?まさか…は?」
『…倒してもらいたい。』
「はあああ!?あれを!?飛んでんじゃん!え!?」
『お前、1回だけなら倒したことあるだろ?まあ、俺もいたけど…。…一応モナちゃんにも声かけといたから…頑張って。』
その途端、ブツっと電話が切れた。携帯と空を交互に見る。
いや、ありえない。竜だぞ?
でも…たまにいるんだよなぁ。ああいう、変化しちゃうやつ。なんなら父さんもそのタイプだった。狼だとか大蛇だとか、なんかそういう凶暴系。うわーマジかーあれを?え?嘘でしょ?
俺とゲンが倒したのは、小型のもので、30年に一度、必ず現れるものだった。でも、今回は違う。大型よりもさらに大きい、超大型。確か、100年に一度現れるもの。これを見ずに死ぬ人もいる、珍しい竜だ。
とりあえずいつもの服に着替えて、準備を整える。
ピンポーン
チャイムが鳴った。ドアを開けると…。
「大変だよ!竜が出たー!」
「…うん、知ってる。」
案の定、モナのお出ましだ。家に招き入れ、俺はとあるノートを探す。
「どうすればいいの?あんな大きなもの、倒したことないよ!」
「落ち着いて。竜はすぐに降りてこない。今は落ち着いて準備を進めよう。」
「…なんか急に教育係っぽくなった!?」
「そりゃどーも。」
「…あの机の上にあるおにぎりは?」
「腹が減っては戦はできぬ。俺が握ったのでよければどうぞ。」
「やったぁ!お腹すいてたんだよね〜。」
おにぎりを見て安心したのか、すっかり上機嫌で頬張り始めてしまった。やっぱりあいつ、精神年齢低いと思う。
一方こちらも、探していたものを見つけた。ある時ゲンからもらったノートで、倒し方的なのが細かく書かれている。一番最後のトピックスが、やはり『竜』だった。
前に倒した時は8年前。流石に忘れているので、思い出したかったのだ。机にノートを置き、おにぎりを食べながらモナと読み込む。
基本的なやり方は変わらない。体術や障害物を使って相手の体勢を崩し、中に入って握り潰す。問題は、どうやって竜の体勢を崩すかだ。強引にしがみついたところで弾き飛ばされるのがオチだ。何か致命傷を与えてからの方が安全で確実。
その横に、ゲンの字でメモが書かれていた。
『竜は逆鱗を刺せば動けなくなる!』
逆鱗とは、竜の顎下付近にある、一枚だけ逆さに生えたウロコのこと。
「じゃあそこをグサッと…!」
「どうやって?相手は飛んでるじゃん。」
「ん〜…飛び乗る?」
「無謀だろ〜…。」
「前はどうやったの?」
「…小型だったから、そんなにウロコも硬くなくて、銃とかでチクチクダメージ与えてたらたまたま逆鱗に当たって落ちた。」
「でも今回は…。」
「大型なんだよなぁ…。」
「…飛び乗る?」
「…しかないかもな。別に触り続けられればいいんだし。」
「じゃあ私がやるよ!私の方が速く握りつぶせるでしょ?」
「まあ、確かに…。そこらへん、ためらわないからな。じゃあ、俺が囮になる。モナが飛び乗って倒せ。」
「りょーかい。」
おにぎりを腹に流し込んで、外へ出る。もうすぐ夜が終わる。
準備体操してから、俺は目立つ場所へ。モナはこの街で一番高い、展望台へ向かった。
ここでしくじれば、多分この街の人間は全滅する。それどころか、全員に危害が及ぶ。なんとしても、ここで終わらせないと。さっきよりも低空を飛ぶ竜を睨んだ。
正直、この作戦はかなり危ない橋を渡っている。もしかしたら死ぬかもしれない風前の灯だ。モナから電話がかかってきた。
『着いたよ。』
「どんな感じ?」
『結構近い。でも、もう少し上を飛んでる。』
「りょーかい。じゃあ始めようか。」
『…コウ。どうしよう…。足が動かないや…。あれ?大丈夫だと思ったのにな〜…あはは…。』
「…ビビリ。」
『はぁ!?ビビってないし!大丈夫だし!』
「よし、じゃあやるぞー。」
『……生きて帰って来れたらいいね。』
「だな。…よーい……スタート。」
まずは俺から。持っていた懐中電灯の灯りをチカチカさせて、できるだけ気を引く。竜はちらりとこちらを見た。あいつ、目がいいんだろうなぁ。…人間だって気づいて、すぐに飛んで来たんだけど。
「うわ、でっけー…。」
必死に展望台の方へ走る。が、それより速く追いつかれた。すぐ後ろに竜の口がある。ぱくぱくしながら、建物を壊しながら突き進んでくる。
いつも、ゲンのいる場所へ使っていた近道が、こんな使われ方する日が来るなんて…。
ただ走った。仕事のために、自分が死なないために。
どれだけ走っただろう。展望台が近い。
ここが勝負!高い建物から思いっきり跳躍して、展望台の開いている窓から中へ入った。もちろん窓をくぐれない竜は展望台に激突した。頭を強く打ちつけ、怯んでいる。食べられないように細心の注意をしながら、モナを待つ。
「うああぁ!」
情けない悲鳴と共に、モナがボトッと落ちてきた。竜のツノとツノの間だ。
すぐに手のひらをくっつけた。
よし!
ガアアアアアァァァ!!
…が、竜はそんなものではなかった。