「結局今日はひとりだけか〜。」
「まあ、そんなもんでしょ。」

 夜、今日もほとんど何事もなく終わってしまった。夜ご飯も食べたし、もうあとは帰るだけ。一応、10時まではパトロールしろと言われているので見回っている。あと2分だ。

「…このあと、家来る?私、一人暮らしだから…親いないんだけど…。
「は?」
「嘘だよ〜。はい、真に受けた〜。」
「受けてねぇし。」
「ねーねー『愛してるゲーム』しない?勝った人はなんでもひとつ願いを叶えられるの。」
「…どうでもいい…。」
「じゃあ、私からね。…愛してるっ!」
「……。」
「不動!強いな〜!じゃあ次、どうぞ。耐えてみせるっ!」
「……。」

 聞かされるのは、別に聞き流せばいいし平気だ。だが、言うとなると一気に恥ずかしさが出てくる。周りには誰もいないが、一応耳元に近づいて、小声で囁くように言った。

「愛してる。」

 よし、これなら周りに聞こえない。そう思ってモナを見ると…耳を押さえてフルフルと赤くなっていた。

「…俺の勝ちね。」
「ずるいよっ!あ、あんなこと…!破廉恥だよ〜!」
「なんにしよう…。聞きたいことあるんだけど、いい?」
「なに…?スリーサイズくらいならいいけど…?」
「いやいらないけど。」
「ひどくない!?」
「…どのくらいまで動けるの?実力が知りたい。」
「うーわ、仕事話なの〜?んー。でも、まだそんなだよ。体力も少ないし。だからその辺は、教えてくださいねぇ?先輩♡」
「帰ろっか。」
「ちょっとは反応して!?」

 モナの家は俺の家から少し歩いたところにあるマンションだった。別れてから、見上げると、まあまあ良さそうなマンションだなぁと感心してしまう。それに比べて俺はボロいアパート。まあ別に、もう慣れてるからいいんだけど。
 スマホのチャット画面を開くと、新しくモナが追加されていた。挨拶していたので、適当に返しておく。
 さっさと風呂に入って寝たい。ザバザバとお湯が溜まっていくのをぼーっと眺めた。
 モナ…。新人にしては上手かったけど、やっぱり新人だな。気づくのもワンテンポ遅いし、とりあえず突っかかろうとする無謀さもある。なんでこの職に就いたんだろう。いや、考えてもしょうがないことは考えない。今日は早く寝よう。

 俺たち2人とも、あの時はなにも気づいていなかった。俺もまだまだ未熟だなぁ。