★敢えて主とならず客となる(あえてしゅとならずきゃくとなる)
《自分が中心にならずに受身でいるほうが無難だということ》
(ことわざ辞典ONLINE.より)
ーーーーー
花金(花の金曜日――文句ある?)、深夜のブラウン管が、バカ笑いのみ虚しく木霊するバラエティ番組に切り替わった途端、イラッとして音量めっちゃ下げた。
「……腹減ったな」
TV音声は殆ど聞こえなくなり。
床に寝そべる若が代わりに呟いた。
ひと昔前ならカップ麺、てとこだが。
中年に差し掛かった若の胃腸は、果たして耐え得るのか。
『ク●クパッドでケンサク!』
「えー……作んのめんどい。なんかサラッとしたヤツが……」
仕様がないな。
私はちょいと羽ばたき、マイ・コレクションから「アレ」を咥えて戻ると、若の眉間に突き刺した。
「死ぐっ! お? おー、噂の『マジやばたにえん』!」
『…………』
「あ、あれ?」
涙の止め方忘れたの?
これは「お茶漬けの素」だよ。永●園謹製……あ?!
「ウ●コ、なんで持ってんの? お前これ食えないだろ?」
その通り。塩分がなー。医者が五月蝿くてよー。
「毎朝血圧測れ」ってめんどいよー。
この茶漬け、中にカードが入ってるだろ。そっちがメインだ。
ほら、コレ。
「へー、今はこんなん付いてくるのか。浮世絵カード……『東海道48』だっけ?」
『ゴジュウサンツギ!』
ご当地アイドルみたく言うなよ。
「茶漬け、食っていいの?」
『ドンナルンマ!』※1
「『遠慮すんな』って? 忝し! よっしゃ、ちょっと食堂で冷や飯漁ってくるよ」
☆☆
丼に控え目な飯を盛って、若が戻って来た。
「さ。遠慮は無用だ。俺のために作ってくれ、ウ●コ!」
『ウ●コヲツクレト?!』
言うなり若が寝転んだ。
ナニしよん? 茶漬けを進呈したの我ぞ?
それぶっかけて湯を注ぐだけだろが。
インコに出来るかっちゅう話だよ。
『アカンタレ!』※2
「あかんたれ?」
『ヘンジモセズニ ワンタンメン!』※3
「意味分からん」
仕方ない。
私も真似して横になった。
右に左にゴロゴロして、時折受け身をとってみる。
柔道? ハハハ。
若は仰向けで、じっとカードを眺めている。
早よ湯を注げや。
ああ、敬愛する広重様。
何年費やすか知らんけど――このカードをコンプリート出来たなら、もういつ死んでも憂いはないでござるよ。
例えその所為で、家中がお茶漬けのパックで埋め尽くされたとしても……。
ふと。
カードをひっくり返して凝視していた若が、パッケージを指差して言った。
「ここの応募マーク三枚集めて送ると、『カードフルセット』プレゼント! だと」
『………………?』
「毎月千名様に! 抽選だけど、すぐ当たりそうじゃん?」
え――オレもう死ぬ?
ーーーーー
※1 ジャンルイジ・ドンナルンマ。イタリアの人。
仏のプロサッカー『リーグ・アン』の『パリ・サンジェルマン』ちゅうチームに所属する選手。ポジションは「キーパー」。
※2 『あかんたれ』(1976年)。東海テレビ制作の昼ドラ。
※3 同主題歌(鶴岡雅義と東京ロマンチカ)の歌詞より。
こういう切り取り方すると意味不明ですが。割りと辛気くさい歌詞とも言えます。
《自分が中心にならずに受身でいるほうが無難だということ》
(ことわざ辞典ONLINE.より)
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花金(花の金曜日――文句ある?)、深夜のブラウン管が、バカ笑いのみ虚しく木霊するバラエティ番組に切り替わった途端、イラッとして音量めっちゃ下げた。
「……腹減ったな」
TV音声は殆ど聞こえなくなり。
床に寝そべる若が代わりに呟いた。
ひと昔前ならカップ麺、てとこだが。
中年に差し掛かった若の胃腸は、果たして耐え得るのか。
『ク●クパッドでケンサク!』
「えー……作んのめんどい。なんかサラッとしたヤツが……」
仕様がないな。
私はちょいと羽ばたき、マイ・コレクションから「アレ」を咥えて戻ると、若の眉間に突き刺した。
「死ぐっ! お? おー、噂の『マジやばたにえん』!」
『…………』
「あ、あれ?」
涙の止め方忘れたの?
これは「お茶漬けの素」だよ。永●園謹製……あ?!
「ウ●コ、なんで持ってんの? お前これ食えないだろ?」
その通り。塩分がなー。医者が五月蝿くてよー。
「毎朝血圧測れ」ってめんどいよー。
この茶漬け、中にカードが入ってるだろ。そっちがメインだ。
ほら、コレ。
「へー、今はこんなん付いてくるのか。浮世絵カード……『東海道48』だっけ?」
『ゴジュウサンツギ!』
ご当地アイドルみたく言うなよ。
「茶漬け、食っていいの?」
『ドンナルンマ!』※1
「『遠慮すんな』って? 忝し! よっしゃ、ちょっと食堂で冷や飯漁ってくるよ」
☆☆
丼に控え目な飯を盛って、若が戻って来た。
「さ。遠慮は無用だ。俺のために作ってくれ、ウ●コ!」
『ウ●コヲツクレト?!』
言うなり若が寝転んだ。
ナニしよん? 茶漬けを進呈したの我ぞ?
それぶっかけて湯を注ぐだけだろが。
インコに出来るかっちゅう話だよ。
『アカンタレ!』※2
「あかんたれ?」
『ヘンジモセズニ ワンタンメン!』※3
「意味分からん」
仕方ない。
私も真似して横になった。
右に左にゴロゴロして、時折受け身をとってみる。
柔道? ハハハ。
若は仰向けで、じっとカードを眺めている。
早よ湯を注げや。
ああ、敬愛する広重様。
何年費やすか知らんけど――このカードをコンプリート出来たなら、もういつ死んでも憂いはないでござるよ。
例えその所為で、家中がお茶漬けのパックで埋め尽くされたとしても……。
ふと。
カードをひっくり返して凝視していた若が、パッケージを指差して言った。
「ここの応募マーク三枚集めて送ると、『カードフルセット』プレゼント! だと」
『………………?』
「毎月千名様に! 抽選だけど、すぐ当たりそうじゃん?」
え――オレもう死ぬ?
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※1 ジャンルイジ・ドンナルンマ。イタリアの人。
仏のプロサッカー『リーグ・アン』の『パリ・サンジェルマン』ちゅうチームに所属する選手。ポジションは「キーパー」。
※2 『あかんたれ』(1976年)。東海テレビ制作の昼ドラ。
※3 同主題歌(鶴岡雅義と東京ロマンチカ)の歌詞より。
こういう切り取り方すると意味不明ですが。割りと辛気くさい歌詞とも言えます。