吾輩は××インコのウ●コである(→羽毛は真っ白け)。
 名前はまだ無い。

 ――失礼。いきなり嘘をつき申した。
 さっき言ってしもうたがな。
 ウ●コだ。もう一度言わせてもらおうか。

 私の名はウ●コ(三回目)。
 人間界では特別な意味を持つ言の葉らしい。
 皆から「若」と呼ばれる、名付け親の(あるじ)(♂)が言っていた。アラサーの主が。女にだらしない主が。

 名を付けた当時は、彼も頑是(がんぜ)ない子供だったのだ。
 いや寧ろ子供ゆえに……。
 若気の至り、重々承知の助である。


 私は幼き頃、この邸宅の玄関先で、同じく幼少の若に保護された。
 今は女にだらしのない若に(再度)。
 私と若とは兄弟同然に育った。※主とウ●コが兄弟同然に育ったのだ(※印繰り返し)。
 そんな主も今や父御(ててご)の後を襲い、若きCEOとして一所懸命家業のナンタラに勤しんでいる。


 私の朝は早い……かもしれない。May be。
 屋敷の三階で若と寝所(しんじょ)を共にしているが、目覚めるのは私が先だ。
 若は低血圧だ。ついでに低血糖気味……かどうかは分からない。


 私は起床ののち、ひと口の水を啜ると、すぐさまテレビのリモコンスウィッチに突撃する。「嘴で乱暴(ランボー)(怒りの脱出)にON」だ。
 餌を(ついば)むが如くガツガツとボリュームを上げ、若の覚醒を促す。
 一瞬で、「耳の遠い独居老人の部屋」みたくなちゃたよ。


 テレビでは女子アナが、

『――××は変わらず「ああ言えばこう言う」といった調子で、のらりくらりと……』

 冷めた顔で原稿を読み上げている。

「ああ言えばジョ●ユー」……?
《他人の言に、エロエロ理屈を捏ねて従わない様――》

 何故(なにゆえ)、こんなセンテンスが頭に浮かぶのか。
 ……私の前世はラジオなのかもしれない(生き物ですらないという)。


 CM中にふと流れた「●●●●」というフレーズに、ベッドで爆睡していた若が過敏に反応して飛び起きた。
 ほほう、これは重畳。
 この先、起こす作業が楽になるやもしれぬ――。

 私は、いっちょ叫んでみせた。

「ヒモパンッ! ヒモパンッ💢」

「無意識に繰り返してしまう」のは、インコ属性の哀しい(さが)とお(ゆる)し願いたい。

 寝惚け(まなこ)のだらしない顔を向けた若が、ニッチャァと超絶気色悪い笑みを浮かべた。

 ……なるほど。覚えておこう。

 若は、「ああ言えば幸福(こうふく)」――らしい。