「はい」
 私は答えた。

「謙虚だなあ。だからこそ選ばれたとも言えるけど」
 神はまた面白そうに言った。

「平凡に、普通に。その願い、叶えよう」
 彼は言った。

 直後、杖からまばゆい光が発せられる。
 私は思わず目を閉じ、両腕で目をかばった。





 光が収まると、私は小屋のような家の中にいた。

 私の家だ、と直感的にわかった。

 内装はヨーロッパの古い家のようでいて、違った。かまどはスイッチ一つで火がついて、レバーで火力調節もできた。照明も壁のスイッチでオンオフができた。どういう仕組みなのかはわからない。トイレもお風呂も現代に近いものが存在していて、私はほっとした。

 外に出てみると、外観もヨーロッパのようだった。本物を見たことないけど。

 まじまじと家を見ていると、通りすがりの女性に声をかけられた。

「こんにちは。もしかして新しい転生者さん?」

「えっ……」
 私は驚いて彼女を見た。どうしてわかるんだろう。そういう能力の持ち主だろうか。

「新しくこの家ができたから、きっとまた転生者が来るのね、と予想してたの」

「そうですか」
 能力とかではなかったらしい。

「私も転生者なの。この街は転生者ばかりでできているのよ」

「そうなんですね……」
 神が言った通りのようだ。ならば見た目はともかく中身は現代人ばかりということだろうか。

「あなたはなんの能力をもらったの?」
 彼女は屈託なく聞いてくる。

「なにもないです」
「またまたあ。もらうでしょ、普通」

「いえ、必要ないと思ったので」
「ええ!?」

「あなたはなにかもらったんですか?」
「癒やしの力をもらったわ。癒やしてあげるわね」
 そう言って、彼女は私のおでこに手を当てた。なんだかあたたかくなって、ほっとするような感覚があった。

「ありがとうございました」
「どういたしまして」
 彼女はにっこりわらった。

 「ここにいる人たちはね、みんな誰かを助けたいと思ってる優しい人たちばかりなのよ。遠慮なく頼るといいわ」
 彼女はそう言って去って行った。