愛想が良い子だな。それが彼女の第一印象だった。
喋る声音は柔らかで、顔には穏やかな笑みが広がっている。けれどそれらはあくまで自然体で、作られている雰囲気はない。彼女は、まるで太陽のような女の子だった。
「今回は絶対大丈夫!って思ったのにさ、私だけ赤点だったんだよ!?クラスで私だけ赤点!」
そう言いながらむっと頬を膨らませる姿はまるでリスのようで、私は自然と自分の口角が上がるのを感じた。
「勉強ほとんどしてないって言ってなかった?」「なんで大丈夫だと思ったん?」
そんな声に、彼女は「テスト前日って謎の自信湧いてこない?」なんて返しながらケラケラと笑う。
「勉強は……まぁ確かにそんなにしてなかったんだけど、言うても国語のテストだし?私って日本生まれ日本育ちだし?いけるかな~って思うじゃん!」
いかにも勉強ができなさそうな発言をする彼女は、見る人によっては愚かしいと思われてしまうのかもしれない。しかし、私はこの短時間ですっかり彼女に惹かれきってしまっていた。
「家の近くに好きなドーナツ屋さんがあるんだけどさ、最近ドーナツのサイズが小さくなってたんだよ!値段は変わらないのに!これ酷くない!?」
今日も今日とて彼女は元気に口を動かす。
「勘違いとかじゃなくて?」
そんな言葉に、「違うから!」と叫びながらわざとらしく眦をつり上げる様に、私の心臓はどくんと大きく脈打った。
こんな仕草、彼女以外の人がやっていたら「わざとらしいな」と思っていただろう。けれど、彼女に対してだけは不思議とそんなことを思わなかった。くるくると変わる表情を愛おしいとさえ感じた。どうしてこんなに惹かれるのか、明確な理由は分からない。しかし、私が彼女に向ける感情は愛情と呼んでも差し支えないほどに大きく膨らんでいた。
「そういえば、この間補習があったって言ってなかった?」
ふと思い出してそんなことを呟くと、彼女の瞳がぱっと開かれる。そして、次の瞬間には「そうなの!補習!」という大きな声が響き渡った。
「そもそもドーナツ買いに行ったのだって補習に備えて勉強頑張るためだからね!意味もなくカロリーだけ摂取してるわけじゃないんだよ?」
カロリー摂りすぎ、なんて一言も言っていないのにそう弁明してくる彼女が愛おしい。勉強が苦手だったり甘いものが好きだったりやけに貧乏性だったり、彼女のこういう親しみやすいところも愛着が湧く原因なのかもしれないな。そんなことを考えながら、私は喋る彼女の顔を見つめる。
「補習の最後にテストやるぞって言われてたから今回はほんとに頑張ったんだよー!頭使うとお腹空いちゃうから毎日ドーナツ食べてさ」
確かに彼女はお世辞にも頭が良いとは言えないけれど、努力ができない人というわけではない。だから”頑張った”というその言葉は本当なのだろう。その証拠に、彼女は「なんとテストでは73点取れました!」なんて言いながらピースサインをきめている。悪くもないが良すぎない点数を取っているところまで含めて彼女らしいなぁと思い、私は思わず笑みを溢した。
やっぱり彼女は太陽だ。見ているだけで思わず笑顔になってしまうような、ぽかぽかしていて温かい私の太陽。
そんなことを考えながら、私はマウスを動かしてチャット欄を開く。そして、『テストお疲れ様』という言葉と共に月給の十分の一程度の額の投げ銭を投げた。私の太陽が、どうかこれからも画面の向こう側で輝いてくれますように、と願いながら。
喋る声音は柔らかで、顔には穏やかな笑みが広がっている。けれどそれらはあくまで自然体で、作られている雰囲気はない。彼女は、まるで太陽のような女の子だった。
「今回は絶対大丈夫!って思ったのにさ、私だけ赤点だったんだよ!?クラスで私だけ赤点!」
そう言いながらむっと頬を膨らませる姿はまるでリスのようで、私は自然と自分の口角が上がるのを感じた。
「勉強ほとんどしてないって言ってなかった?」「なんで大丈夫だと思ったん?」
そんな声に、彼女は「テスト前日って謎の自信湧いてこない?」なんて返しながらケラケラと笑う。
「勉強は……まぁ確かにそんなにしてなかったんだけど、言うても国語のテストだし?私って日本生まれ日本育ちだし?いけるかな~って思うじゃん!」
いかにも勉強ができなさそうな発言をする彼女は、見る人によっては愚かしいと思われてしまうのかもしれない。しかし、私はこの短時間ですっかり彼女に惹かれきってしまっていた。
「家の近くに好きなドーナツ屋さんがあるんだけどさ、最近ドーナツのサイズが小さくなってたんだよ!値段は変わらないのに!これ酷くない!?」
今日も今日とて彼女は元気に口を動かす。
「勘違いとかじゃなくて?」
そんな言葉に、「違うから!」と叫びながらわざとらしく眦をつり上げる様に、私の心臓はどくんと大きく脈打った。
こんな仕草、彼女以外の人がやっていたら「わざとらしいな」と思っていただろう。けれど、彼女に対してだけは不思議とそんなことを思わなかった。くるくると変わる表情を愛おしいとさえ感じた。どうしてこんなに惹かれるのか、明確な理由は分からない。しかし、私が彼女に向ける感情は愛情と呼んでも差し支えないほどに大きく膨らんでいた。
「そういえば、この間補習があったって言ってなかった?」
ふと思い出してそんなことを呟くと、彼女の瞳がぱっと開かれる。そして、次の瞬間には「そうなの!補習!」という大きな声が響き渡った。
「そもそもドーナツ買いに行ったのだって補習に備えて勉強頑張るためだからね!意味もなくカロリーだけ摂取してるわけじゃないんだよ?」
カロリー摂りすぎ、なんて一言も言っていないのにそう弁明してくる彼女が愛おしい。勉強が苦手だったり甘いものが好きだったりやけに貧乏性だったり、彼女のこういう親しみやすいところも愛着が湧く原因なのかもしれないな。そんなことを考えながら、私は喋る彼女の顔を見つめる。
「補習の最後にテストやるぞって言われてたから今回はほんとに頑張ったんだよー!頭使うとお腹空いちゃうから毎日ドーナツ食べてさ」
確かに彼女はお世辞にも頭が良いとは言えないけれど、努力ができない人というわけではない。だから”頑張った”というその言葉は本当なのだろう。その証拠に、彼女は「なんとテストでは73点取れました!」なんて言いながらピースサインをきめている。悪くもないが良すぎない点数を取っているところまで含めて彼女らしいなぁと思い、私は思わず笑みを溢した。
やっぱり彼女は太陽だ。見ているだけで思わず笑顔になってしまうような、ぽかぽかしていて温かい私の太陽。
そんなことを考えながら、私はマウスを動かしてチャット欄を開く。そして、『テストお疲れ様』という言葉と共に月給の十分の一程度の額の投げ銭を投げた。私の太陽が、どうかこれからも画面の向こう側で輝いてくれますように、と願いながら。