食事会は猛烈に進んでいた。
子供達の食欲は半端ない。
途中で足りなくなりそうだと、俺はスーパー銭湯の大食堂に転移し、メルルにおにぎりを適当に作ってくれ、と指示を出した。
何かを察したのかメルルは、直ぐに料理班を纏め、おにぎりを速攻で作り上げていった。
出来たスタッフでありがたい。

そのおにぎりを抱えて、俺はボイルの街に転移した。
子供達は美味しそうに、おにぎりにムシャぼりついていた。
だが流石に全てを食べきれることは無く、残りは明日の朝食へと成り代わっていた。
にしてもよく食う子たちだ。

我を取り戻したファメラ様は、
「ごめんよ、恩にきる」
とすまなさそうにしていた。

こっちとしては好きでやっていることなので、恩でもなんでもないんですがね。
だって子供達が美味しそうにご飯を食べている姿って・・・癒されるんですよねー・・・
その姿を見るだけで、こっちも腹一杯になるってくるというか、なんというか・・・
爺い黙ってろ!って感じかな?
爺いって失礼な!肉体は二十台ですよ!あっ!精神年齢は・・・定年です。
要らない、自問自答ですいません。

「ファメラ様、食事は満足できましたでしょうか?」

「満足も何も・・・こんなお腹いっぱい食べたことなんて・・・あ!そうえば。僕のことをファメラ様なんて言わないでくれるかな?堅苦しい話し方をしないでよ」

「では、ファメラさんとお呼びすれば?」

「止めてよ!子供達ですら呼び捨てなんだよ、ファメラでいいよ!」
相当フランクな神様のようだ。
であれば遠慮なく。

「ファメラ、満足出来たかな?」

「ああ!それはもう!・・・」
あれ?急にテンションが変わってしまったぞ!
どういうことだ?

「ああ・・・ごめん・・・ここ数年こんなことは無かったから、嬉しくって・・・つい・・・」
そういうことか・・・
こんな事でよければ、どれだけでも力を貸しますがな!
フンス!

「島野だったよね?・・・」

「そうだ」

「フレイズ様から聞いてはいたけど、出鱈目だね!」
なんでそうなるかな?
そもそもフレイズって誰?
まあ俺は出鱈目だって、自覚はありますがね。

「あの・・・フレイズって誰なの?」

「え!」
考えられないといった表情を浮かべるファメラ。
だって知らないんだもん。
俺は知ったかぶりはしないのでね、知らないことはちゃんと聞くことにしているのだよ。
かくは一時の恥ってね。

「フレイズ様は、火の神様だよ・・・」
おおい!
上級神様かよ!多分そうだよね!
言葉の響きとして・・・多分・・・

「で・・・その火の神様が何故に俺のことを?・・・」

「フレイズ様はね、いつもは神界にいるんだけど。時折この世界を覗いているみたいなんだ・・・趣味としてね・・・それで、面白い奴がいるからと、君のことを教えてくれたんだよ・・・いつかボイルにも来るかもって・・・」
何だそれ?
おい!フレイズとやら!
勝手に俺の噂をしてるんじゃねえよ。
上級神?
知らねえよ!
困った上級神様だな。

「フレイズ様は、時々僕の様子を見に来てくれるんだよ」
へえー、そうなんだ。
まあそんなことはいいとして、話すことが沢山ある。

「ちょっと話をしないか?」

「そうだね、僕も君に興味があるよ」
興味って・・・あっそう。

「まずは、神気の減少についてだが、気づいてるよね?」

「勿論、僕は困ってはないけど、外の神達は大変なんだろうね?」
困ってない?どうして?

「困って無いとはどういうことなんだい?」

「僕は炎から神力を得られる能力があるんだ、だから噴火口に居ることにしているんだよ。それに火山が噴火しない様に見張ってるんだ。炎を操って、息抜きさせないと、大きな噴火が起きちゃうからさ」
それは大仕事だな。
それに炎から神力を得るって、とんでもないな。

「そうか・・・となると、火山からは離れられないということなのか?」

「そんなことはないよ、大きい噴火となると、予兆があるからね、それが無ければ、数週間ぐらいは離れることはできるけど・・・この子達がいるからね」
結局は離れられないということか、子煩悩な神様だな。

「まず、協力して欲しいことがあるんだ」
俺は『収納』からお地蔵さんを取り出した。

「へえー、上手なもんだね。想像神様そっくりじゃないか?」

「ファメラは想像神様に会ったことがあるのかい?」

「うん、一度だけね。神獣になった時にさ」

「そうなんだ、それでこれはお地蔵さんっていうんだけど、この街の街道筋なんかに置いて欲しいんだけど、どうかな?」

「僕は構わないけど、一応町長に聞いてみるよ」

「そうか、ありがとう、あとこの街に教会はあるかい?」

「いや、教会はないよ」
そうだよな、じゃないとファメラが孤児達の面倒を見ることに、ならないだろうし。
後はこれだな。
俺は『収納』から転移扉を取り出した。

「これは何だい?」

「これは転移扉っていうんだけど、転移の能力を付与した扉なんだ」

「へえー、それは凄いね」
あんまり驚いた感じではないな。
そんな物もあるか?といったぐらいだ。

「これを使えば、俺達が住んでいるサウナ島に来ることが出来るし、南半球の全ての国や街に繋がっているから、便利に使って欲しいんだ。それにサウナ島には、南半球の全ての神様達が集っているんだよ」

「そうなんだね」
あれ?そこまででも無い・・・もしかして知ってた?

「もしかして・・・知ってた?」

「うん・・・フレイズ様から聞いてたよ」
おいおい!
何なんだよフレイズって!
いいとこ持ってくんじゃないよ!
驚かれる楽しいパートなのに・・・
まあいいか。

「そうか・・・それでいるかい?」

「勿論頂くよ、まずはそのサウナ島に行ってみたいな。凄いところなんでしょ?」

「そうだよ、凄いところだよ!」

「そうです、サウナ島は凄い所なんです!」
とゴンとギルは片付けが済んだのか、会話に交じってきた。

「紹介するよ、ギルとゴンだ」

「ギルだよ、よろしくね!」

「ゴンです、よろしくお願いします!」
と二人は会釈していた。

「僕はファメラ、よろしく!」
紹介は済んだご様子。

「ファメラ様、聞きたいことがあります」
ゴンは質問がみるみたいだ。

「何だい?あと様は止めてくれよ、同じ聖獣じゃないか?」

「でもファメラ様は、神獣に成られたんですよね?」

「そうだよ、でもそんなことはどうでもいいじゃないか。たいして変わらないよ」

「たいして変わらないですか?」
ゴンには分からないようだ。

「そうだよ、違うかい?」
とファメラは首を傾げている。

「そう言われましても、こちらとしては大きく違うとしか言いようがないです」

「でも、ギルは神獣だろ?それに見てたけど、ゴンはギルのお姉ちゃんなんだろ?」

「それはそうですが・・・」

「でしょ?変わらないよ」

「・・・」
ゴンはいまいち理解できていない顔をしている。

「僕はね、確かに聖獣から神獣になったよ、でもやってることは同じだし、寿命が無くなったぐらいしか変わってないよ。それに神の能力も魔法も開発していく物だからね」
なるほど、確かにそうだな。
やっていることは同じで、神の能力も魔法も、神獣であっても、聖獣であってもすることは一緒ということだな。
言いたいことは分かる。

「そう言われるとそうなのかもしれませんが・・・」

「僕はゴン姉とたいして変わらないと思っているよ」
ギルも追随する。

「だよね?」

「そうだよ」
表情を見るに、ゴンはまだ納得はいっていないようだ。
でも、反論も出来ないみたいだ。

「それで何を聞きたいんだい?」

「いえ・・・もう大丈夫です・・・」
ゴンの用事はあっさりと済んでしまったようだ。
神獣と聖獣の違いが聞きたかったらしい。

「そう?」

「ファメラは子供が好きなんだね?」
ギルは笑顔だ。

「そうだよ」

「またここに来てもいいかい?友達を連れてさ」

「いいよ、いくらでも来てくれよ。子供達も喜ぶよ」

「ほんと?やった!」
ギルはほんとに子供達が好きなようだ。
どうせテリー達を連れてくるに決まっている。
あいつらも孤児を外っとくことは、出来ないだろうしな。

「ねえパパ、子供達をサウナ島に連れて行っていい?」

「ああ、そう言うと思ってたぞ。それにファメラもサウナ島に来たいみたいだしな」

「うん!行きたい!」

「じゃあ早速行くか?」

「行こう行こう!」
子供達を連れて、サウナ島に向かうことになった。
勿論料金なんて頂かない。
全て俺持ちである。

サウナ島の景観にファメラと子供達は驚いていた。
そして子供達のテンションが上がっていく。
まずは風呂に入ることになったが、まだ小さい子達もいる為、半分は家族風呂を使う事になった。
引率はギルが買って出ていた。

風呂を楽しんだ後、ファメラはさっそく、神様ズの対応に追われることになっていた。
ほどんどの神様ズから挨拶を受けていた。
ファメラは神様ズからは、それなりに認知されていたようで、話はスムーズだ。
その時には俺とゴンと、新たに加わったノンで、子供達を遊戯スペースで遊ばせていた。
子供達は我先にと遊びに夢中で、スーパー銭湯を楽しんでいた。
俺はそれを微笑ましく眺めつつ、子供達の相手をしていた。

ファメラは終始圧倒されており、それでいて、新しい世界感を楽しんでいるようだった。
案の定、お腹が減ったと子供達が騒ぎだした。
あんなに食べたのに、凄い食欲だ。
大食堂に子供達を集めて、再度食事会が始まった。
子供達は我先にと、思い思いの食事を楽しみ、甘味に貪りついていた。
ソフトクリームの人気が半端なく、漏れなくポタポタと溢していた。
拭けばいいから大丈夫。
気にしなさんな。
あ!丸ごと落とすのは流石になしだ。
やれやれだ。

その後遊び疲れた子供達は眠ってしまい。
従業員達に手伝って貰って、ボイルの街に子供達を背負って、送ることになってしまった。
帰り際にファメラからお礼と共に、相談したいことがあるから、明日にまた来て欲しいと言われた。
何の相談だろうか?
大体の想像は付くが・・・



翌日。
俺は一人で、ボイルの街に行くことにした。
当然たくさんのお土産が『収納』に入っている。
どうやらファメラは、ワインが気に入ったみたいだ。
それだけでは無く、子供達に大量の食料品と野菜と肉がある。
恐らく一週間以上は、充分にもつと思われる。
果たして誰が調理をするのかは知らないが、あったに越したことはないだろう。

ファメラの家に着くと、猛烈な歓迎を受けることになった。
子供達が我先にと、俺に纏わりついてくる。
中には俺の肩に登ろうと、必死に人間クライミングを敢行する強者までいた。
俺は為すが儘に受け入れていた。
子供の無邪気な想いを楽しんでいた。
そこにファメラが現れた。

「島野、捕まっちゃったね」
とファメラは笑顔だ。

「ああ、そのようだ。でもちょっとごめんよ、やることがあるからな」
と俺は子供達を引き剥がした。
俺は『収納』からお土産を取り出し、そして、なんちゃって冷蔵庫を造ることにした。
これがあれば、食材も腐らせることはないだろう。
その様子を子供達とファメラは、興味深々に眺めていた。

「おおー!」

「これは何?」

「なんかカッコいい!」
と子供達はお行儀よく観察している。
完成したなんちゃって冷蔵庫に氷を入れて、食材を詰め込んで終了した。

「よし!完成!」
さくっと造ってみましたよ。
これで当面は食材に困る事は無いでしょう。

「凄い島野!」

「島野凄い!」

「島野!」
と子供達から島野扱いを受けてしまった・・・別にいいのだが・・・
俺は、完成したなんちゃって冷蔵庫を眺めていた。
ファメラが近づいてくる。

「何から何までありがとう、島野」
とファメラは笑っていた。

「これぐらい、いくらでも頼って下さいな」

「助かるよ」

「それで?相談に乗ってやりたいが、どうすればいい?」
まだ子供達が纏わりついてくる。

「そうだね、ちょっと待ってて」
とファメラは奥に引っ込んでいった。
その後に、一人の女性を伴って現れた。
その女性はこれぞビックママといった、風貌の豊満な女性だった。
エプロン姿がとても似合っている。

「島野、こちらはマロンさん。皆の面倒を見てくれているんだ」

「あら、あなたが島野さんね、ファメラから聞いているわよ。いい男じゃないの」
と大人の余裕を滲ませる発言をしている。

「始めまして、マロンさん。あなたもお綺麗で」
とこちらもウィットに飛んだ返しをしておいた。

「あらやだ!お上手ね!」

「いえいえ、そちらこそ!」
と大人の会話を楽しんでみた。
そんな俺達を、生暖かい眼でファメラが見つめていた。

「そろそろいいかな?」

「ああ、ではマロンさん。子供達をお願いします」
俺は、マロンさんに会釈した。
奥の部屋に入ると、簡単な椅子があり、ファメラはそこに腰かけた。
俺は正面の椅子に腰かける。

「それで、相談とはいったい何なんだい?」

「まずはその前に、町長の許可が出たから、お地蔵さんを何体か頂くよ」

「それは助かる。何体ぐらい設置できるかな?」

「そうだね、六体貰うよ」

「分かった」
と俺は『収納』からお地蔵さんを六体取り出した。

「それで、あまりまだ付き合いの短い君に、相談することではないんだけど。昨日ほとんど神達から、困りごとがあったら、島野に相談しろと言われてね」

「へえー」
あの人達は何やってんだか・・・
まあいいけどさ。

「実は、簡単な話が、子供達のことなんだ」

「子供達?」
どういうことだ?

「うん、これまでは何とか寄付やらで、やりくりしてきたけど、そろそろ限界でね。どうしたものかと困っているんだ」

「なるほどね」
概ね想像通りだな。
要は稼ぎ口が欲しいという事だな。

「今日もいろいろ貰って、ほんとに助かっているよ。でもいつまでも好意に頼っては要られないと思ってさ」

「そうだろうな」

「それで、島野に相談したいということなんだよ」
なるほどね。

「そういうことね、いくつか案があるが、まずは教えて欲しい事があるんだが、いいかな?」

「教えて欲しい事とは?」

「まずはこの街の現状と特産品だな」

「そうだね、まずは街の現状としては、貧しい街だと思う。ゆとりがあるとは思えないよ、特に昨日サウナ島を見た限りでは、ね」
とファメラは歯切れが悪い。
サウナ島の現状を見て、この街の現状をそう捉えたみたいだ。

「そうか」

「それと慢性的に火山灰に困っているよ。僕も頑張ってはいるけど、こればかりはどうにも出来ないんだよ。風魔法を使える者に頼んで、灰を除去するんだけど、上手くはいってないね。時に農作物に大きな被害が出る時があるんだ」

「そうだろうな」

「でも不思議なもので、逆に農作物が大きくなって上手くいく時もあるんだ。僕にはよく分からないよ」

「そういう事ね」
ここはアイリスさんの出番だな。
彼女なら確実に上手くやってくれるはずだ。
丸投げしますがすんません。

「後は、交易もこれまではエアルと少しあったぐらいでしかないよ」
ここまでは、概ねロンメルから聞いていた通りだな。

「特産品はどうなんだ?」

「それは先ほど話した、農産物が上手くいった時に、それが特産品になっているぐらいしか思いつかないな」

「そうか・・・」

「どうだろうか?」
とファメラは不安そうだ。

「まず、火山灰だが、これが特産品になる」

「え!どういうこと?」
とファメラは驚いている。
それはそうだろ、火山灰はこの街にとっては害でしか無かった物だ。
それが特産品になるんだからな。
驚いて当然だろう。

「火山灰は俺が知る限り、様々な使い道があるんだ。まずは火山灰を孤児達に集めさせたらどうだろうか?いい収入になると思うぞ?」

「嘘!そんな・・・」
ファメラは眼を輝かせている。

「いいかい?まずは火山灰だが、扱い方が重要になるが、畑の肥料になるんだ。それに陶磁器の良質な釉薬にもなる。独特な色合いが出ると、陶磁器を扱う者にとっては、とても貴重なものだ。更に建築部材としても使える。とある建築部材に混ぜ合わせることによって、とても頑丈な物になるんだ」

「そうなのか・・・」

「ああ、そうだ。火山灰は決して害では無いということだ。使い方次第なんだ」

「・・・」

「そして、気をつけないといけないことは、火山灰はあまりに多くを吸ってしまうと、健康被害に繋がる危険性がある。そこで俺が作るマスクを、必ず子供達には着用させて欲しい。これは絶対だ、嫌がるようならその子は作業から外して欲しい」

「そこまでなのか?」

「ああ、健康には代えられない」
そう、健康に難がある様では意味が無い。
そんなことは断じてさせられない。

「まずは準備してくるよ。明日にまた打ち合わせをしよう」

「分かった」
俺はサウナ島に帰ると、収集用の袋と、紙製のマスクを大量に作成した。
ゴンにはマジックバックを十個ほど造って貰った。
後、スコップを大小各自十個ほど造っておいた。
こんなもので充分だろう。



翌日
俺はギルを伴って、ボイルの街にやってきた。
ギルは子供達に会えると、朝からご機嫌だ。

さっそくファメラに準備した物を渡していく。
収集作業を出来なさそうな小さな子供は、マロンさんとお留守番。
そして、俺達は子供達を連れて、火山灰の収集を行った。
ギルにも内容を予め共有済の為、ギルも積極的に作業に交じり、子供達にレクチャーを行っている。
それにファメラも続く。

作業は思いの外大変だった。
これは作業着が必要だ。
火山灰で服が灰色になっていた。
今日帰ったら作業着を造ろうと思う。
それも〇島標入りだ。

それでも子供達は、作業を楽しんでいたようだ。
街を掃除している様で嬉しいといっていた。
前向きでよろしい!
結局半日かけて、十袋満タンに火山灰が取集ができた。
まだまだ収集出来そうだったが、これぐらいでいいかと作業を終了した。

まずは昼飯だ。
ファメラの家に帰り、さっそく昼飯の準備に取り掛かる。
まずは火山灰を飛ばそうと、全員軒先で自然操作の風で服に付いた火山灰を飛ばして、綺麗にした。
清潔にしてから食事はしたいからね。

「島野はこんなこともできるんだね」
とファメラは関心していた。
私はもっといろいろ出来ますよ。
フフフ。

今日の昼飯は、焼き肉にした。
これならば、マロンさんの手を煩わせることが無いだろう。
魔道具のコンロを四台準備し、その上に大きな鉄板を敷く。
皆で好きに焼いていくスタイルだ。
特に野菜は多めだ。
栄養のバランスは気にしたい所だからね。

子供達は好き嫌いすることも無く、我先にと焼き肉を楽しんでいた。
肉はボア、ピッグ、ブル、チキンと豊富だ。
焼き肉のタレはないが、ハーブを混ぜ合わせた塩を中心に、味付けを楽しんでいた。
子供達用に、焼き肉のタレを開発すべきなのだろうか?
出来なくはないのだが・・・
俺は焼き肉は断然塩派なので、必要性を感じないが、子供達にはタレなんだろうか?
焼き肉のタレは、肉の味では無く、タレの味になってしまうので、正直好みではないのだが・・・一先ず保留だな。
ファメラには、アクセントにと、一味唐辛子を薦めてみた。
これが相当お気に入りになったようで。

「こんな美味しい調味料は始めて食べた!」
とドバドバと、一味唐辛子を掛けていた。
どうやらファメラは辛みが好物らしい。
マロンさんも焼き肉を楽しんでくれているようだ。
魔道具のコンロは差し上げると話したら。

「うっそ!島野さん私と結婚して!」
とウィットに飛んだプロポーズを受けてしまった。

「俺の嫁になると、泣くことになりますよ」
と大人の冗談で返しておいた。
それをギルとファメラは生暖かく眺めていた。
こいつらには大人の冗談は分からないようだ、お子ちゃまだな。

子供達は、
「島野美味しい!」

「旨いよ島野!」

「ありがとう島野!」
とここでも島野扱いを受けてしまった。
まあ、どうでもいいか。

昼飯を終え、ギルとファメラと数人の子供達を連れて、サウナ島に帰ることにした。
その理由はアイリスさんに、火山灰がどれだけの価値があるのかを、見定めて貰う為だ。

「アイリスさん、火山灰を持ってきました。見定めて貰えますか?」

「ええ、見せてください」
子供達が、火山灰が詰まった袋をアイリスさんに渡した。
前持って話を聞いていたピコさんも、同席している。
アイリスさんが火山灰に手を触れる。

「・・・」

「どうですか?」
アイリスさんの表情は真剣そのものだ。
彼女は畑に関しては、一切の妥協がない。

「これは・・・いいです!凄くいいです!これは根菜類の肥料に持ってこいです!」

「おお!」

「やった!」

「ファメラ!良かったね!」
と一同大喜びだ。
そこにピコさんが続く。

「これはメルラドでも購入させて貰えますか?」

「ええ!是非!」
とファメラも興奮を隠さない。

「よし!まずはここからだな!」
と足がかりは出来た。
よかったよかった。

「アイリスさん、これを農業従事者に広めてください」

「ええ、守さん。もちろんです」
アイリスさんは笑顔だ。
アイリスさんの影響力は凄い、これで南半球の全ての農業従事者に、ボイルの街の火山灰が広がると言っても、過言ではないだろう。

「よし、次にいくぞ!」

「「おお!」」
俺達は次に、ゴンガスの親父さんの所に向かった。

「おお!ちびっこ大集合だの!」
と親父さんは上機嫌だ。

「よし、さっそく火山灰をよこせ」
親父さんはノリノリだ。
実は俺は昨日親父さんに、火山灰の話をしていたのだった。
親父さんも火山灰のことは知っており、既に話はついてると言ってもいい状況なのだ。
でも、ここはちゃんと確認が必要なところでもある。
どれだけの品なのか、目利きは必須だ。

親父さんは火山灰を受け取ると、前もって準備されていた、粘土に練り合わせていく。
それを竈に入れて、様子を見る。
親父さんは能力を駆使して、通常は数日かかる作業を、短時間で終わらせていく。

「よし、出来上がったのう」
親父さんは竈から土器を取り出す。

「んん・・・これは良いな・・・」
声を漏らす親父さん。
確かに良い、素人の俺でも、この土器の模様が芸術的に見える。
斑模様と言えばいいのだろうか?
繊細な模様の土器が出来上がっていた。
親父さんが意図して造ったのかは分からないが、相当な芸術品に見える。

「ファメラよ、数袋置いてゆけ」
親父さんの太鼓判を貰うことになった。
ファメラは上を向いて涙を堪えていた。
職人モードに入った親父さんは、一心腐乱に作業を開始してしまった。
高級な土器が、沢山出来上がることになるのだろう。
こうなると作業の邪魔になるので、お暇するしかない。

次に向かったのは、ランドールさんのところだ。
彼は遂に三校目の学校の着工を行っていた。
場所はメッサーラだ。

「やあ、島野さん、ファメラ、火山灰を持って来てくれたのかい?」
ランドールさんは、俺達を待ってくれていたようだ。
タイミングよく、俺は昨日ランドールさんにコンクリートの強度を増す、火山灰があると話をしていた。
ちょうど三校目の基礎を作り出していたランドールさんは、これに飛びついた。

「これで、もっと頑丈な基礎が出来上がる。最高だよ!」
とこちらは試すも何も、あったもんじゃなかった。
その場であるだけ置いていってくれと、二言返事だった。
ちょっと俺を全面的に信用し過ぎなんじゃないですか?
責任は取れませんよ?
まあいいか。
彼の判断に口を挟むことはしまい。



その後、ボイルの村長を代表者に巻き込んで、火山灰の販売は行われるようになっていった。
ファメラにはファメラの仕事がある。
いつまでも子供達に張り付いている訳にはいかない。
それに、火山が噴火してしまっては目も当てられない。
そこまでして火山灰は要りませんて。

そして火山灰を集めるのは、孤児達だけでは無く、手の空いた街の者達が全員行うことになった。
ボイルの街は、新たな収入源に沸いた。
そして販路を広げようと、商人達がボイルの街に訪れる様になっていた。
ボイルの街は活気に溢れていた。

そして、俺は五郎さんにあることを依頼した。
俺には確信があったのだ。
ボイルには泉源があるだろうと。
前に火山のある地域には温泉が出やすいと、聞いたことがあったからだ。
温泉が出れば、新たな収入源になるし、街の人達の新たな娯楽にもなる。
これはとても期待ができる。

俺はギルと五郎さんと、ボイルの街を訪れていた。
五郎さんとボイルの街に行くと言ったら、ギルは付いてきた形だ。
五郎さんはさっそく泉源探索を行った。

「島野!お前えの言うとおりでえ、此処には泉源がある。それも二つもだ!」

「おお!それは凄い!」
ファメラを連れて、さっそく泉源を掘り当てることにした。
五郎さんの指示の元、ギルが土魔法で土を掘り返していく。
すると勢いよく源泉が湧き出て来た。

「熱っちい!」
とギルは源泉に触れて騒いでいた。
前にもこんなことがあったような・・・
ギル君は勉強できているのかい?

「よし、ここは岩風呂にしよう。まずは岩を集めようか?のその前に何人か人を集めよう」
と俺は提案した。

「そこは僕に任せて!」
ファメラは喜々としている。
ファメラが街の人達を集めてきた。

さっそく五郎さんと俺が指示をだした。
街人達が岩を集めている合間に、俺は源泉から引き込みを行い。
浄水場を造っていく。
これは俺も手慣れたもので、数時間で引き込みを完成させた。
浄水場には浄化の魔法を付与してある魔石と、水魔法を付与してある魔石を嵌め込んで、完成した。

そうしたのには意味がある。
源泉が熱すぎたからだ。
それに水道管を引き込んでいない為、こうするしかなかった。
排水は側溝を作製して、自然と土に帰る様にした。
側溝の脇の部分はコンクリートにしてある。

そうしている間に岩が集まってきていた。
岩を纏めて『合成』を行い、岩風呂が完成した。
これにボイルの街人達は大興奮。

「凄い!温泉がボイルに出来上がったぞ!」

「新たな街の特産が出来た!」

「これで毎日風呂に入れる!」
と新たな温泉の完成に沸き立っていた。
だがこれでは終わらない。
泉源はもう一つある。

俺達はもう一つの泉源を掘り当てて、温泉をもう一つ造ることになった。
こちらはちょっと豪華に、檜の温泉にした。
俺は一度サウナ島に帰り、檜の木を伐採してから、檜風呂を造ることにした。
引き込みや浄水場、排水の造りは一つ目と同じになっている。
檜の風呂を造り上げていく。

「よし!二つ目完成だ!」
ボイルの街は異常なテンションになっていた。

「ボイルが変わるぞ!」

「これで街は救われた!」

「ボイルの進化が止まらない!」
と街人達が騒いでいる。

「島野、こうなってくると温泉宿が欲しくなってくるな」

「そこは五郎さんに任せますよ。五郎さんの領分じゃないですか?」

「そうだな、どうしたもんか・・・」
五郎さんは真剣に悩んでいた。
まあ協力を依頼されたら、俺は手伝うまでだ。

その後、この温泉の取扱いについて、ファメラや町長達が話し合うことになった。
この先の営業面については、俺の関与するところではない。
好きにやってくれということだ。
ボイルの街は大きく舵を切り出したようだ。
是非もっともっと発展して貰いたいものだ。
よかったよかった。