そしてレジャー施設にもたくさんのお客が集まっていた。
今ではスカイクラウンも真面目に働いている。
お客相手に真剣にパラシュートの使い方を説明していた。
やれば出来るじゃないか。
最初からそうしろよな。
全く手の掛かる奴だ。

大空を舞台にしたレジャーは今後も流行るだろう。
ある意味エアーズロックの目玉施設だからね。
でも高所恐怖症の人には無理なんだろうな。
エクスみたいにビビりの者もいるだろうしね。
でもスカイダイビングも、パラグライダーも楽しいんだよね。
大空を舞う!
実にお勧めです。



レストラン街とフードコートのグランドオープンの様子を見る限り、この施設を造って本当に良かったと思えた。
とても笑顔に溢れていたからね。
この笑顔を見れただけでも大成功だと思える。
本当に嬉しい限りだ。
どのお店も凄い客入りだったし、オープンセール後も客入りはそれほど減らなかった。
反動があるかと思っていたがそうでも無かった。
フードコートに関しては未だに入場規制が設けられている。
ここまでくると大入りなんて言う言葉も陳腐に感じてしまう。
実際開店から閉店まで客が途切れたことが全く無かった。
とても凄い事だ。
転移扉の移動の料金を格安にしたのがウケたのかな?
多分・・・

そしていよいよスーパー銭湯の別館のグランドオープンを迎えようとしていた。
俺はワクワクが止まらなかった。
昨日の夜は嬉しくてついつい何時も以上にアルコールを飲んでしまった。
こんな時ぐらい良いよね?
浮かれたくもなるでしょうよ。
分かって貰えるかな?

グランドオープンを迎える前に俺は一人サウナに入っていた。
これは役得だろう。
早起きして早朝からサウナを楽しんでいる。
バレルサウナに入っていつものルーティーンを行う。
グランドオープンを前にして一人整っていた。
こんなサウナも悪くない。
早朝サウナ、最高です!

そしてスタッフと同様にスーパー銭湯の法被を着てグランドオープンを迎えた。
久しぶりに法被に袖を通したな。
身が引き締まる思いだ。
さて、グランドオープンだ!



これは凄い事になっているぞ。
開店三十分で入場制限する事態になっていた。
これは早くも脱衣所の増設を考えなければならないのか?
ギルからは開店三時間前には既に行列が出来ているとは『念話』で聞いてはいたが・・・
早朝サウナなんて余裕をかましている暇は無かったのかもしれない。
でもいいじゃないか、それぐらいお気楽で丁度いいだろう。
と安易に考えている俺。
これがいけなかった。

すれ違う人々から賛辞を言われることに成っていた。
中には知らない人も混じっていた。
もし過去に何かしら交流があったのならごめんなさい。
悪気は無いのだよ、決して・・・
忘れているだけだからね。
否、返って失礼かな?

俺は別館を中心に見て周ることにした。
皆な笑顔に溢れていた。
こんな嬉しい事は無い。
こんなに喜んで貰えるとは。
これだけで俺は整いそうだった。
ここまでは俺は余裕だった。
ニコニコと客の同行を眺めていた。



ちょっと待て、客入りが凄すぎる。
これは返ってよくないかもしれない。
というのもスーパー銭湯のサウナ渋滞があまりに激しかったからだ。
これは別館ばかりに眼を向けてはいけなかった。
しまった!
ちょっと考えれば分かることだった。
スーパー銭湯自体のキャパを上げなければいけなかったのだ。
何も別館に人が集まる事だけになる訳ではない。
スーパー銭湯その物の客入りが上がるのだ。
現にサウナ渋滞だけでは無く、洗い場も風呂場も渋滞しており、スタッフが整理しているぐらいだ。
やってしまった!
これは大きなミスだ!
否、そうでは無い。
これはチャンスだ!
初日にしてこれに気づけたからだ。
さて、どうするか?
今日手を打てることは限られている。
でもこうなってしまっては動くしかない。
やれるだけはやらねば!

俺は先ずランドールさんを探した。
彼は律儀にもスーパー銭湯の行列に並んでいた。
鼻の下を伸ばして道行く女性を繁々と眺めていた。
ちょっとした不審者だ。
彼は俺の真剣な表情に何かを感じ取ったみたいだ。

エロ神モードを封印して俺に問いかけてきた、
「島野さん、どうしたんですか?」

「ランドールさん、手を貸してください」

「何があったんですか?」

「やってしまいました、スーパー銭湯自体のキャパが全く足りなくなってしまいました・・・」

「ああ・・・」
状況を直ぐに理解してくれたみたいだ。
ランドールさんも悲壮感溢れる表情をしていた。

「サウナや洗い場であり得ないぐらい渋滞しています」

「そうなのか・・・」

「申し訳ないですが手を貸して下さい」

「全然構わない、否!ここは手伝わせてくれ!こんな事で恩を返せるとは思わないが、私で良ければいくらでも頼って欲しい!」
有難い!
恩にきます!

「では状況を整理しましょう、まずは事務所で打ち合わせをさせて下さい」

「分かった」
俺はランドールさんを伴って事務所の社長室に転移した。
急に現れた俺達にマークが驚いていた。

「島野さん!それにランドール様まで!どうしたんですか?」

「マーク緊急事態だ!」

「なっ!それはいったい・・・」
マークは慄いていた。

「別館に気を持っていかれ過ぎていた・・・スーパー銭湯自体のキャパが全く足りていない!」

「どういうことですか?」

「洗い場やサウナが大渋滞しているんだ、それにスーパー銭湯のお風呂も全くキャパが追いついていない!」
マークはしまったという顔をしていた。

「そういうことですか・・・それでどうするおつもりで?」

「まずは今日中に打てる手は全て打つ、まずは増設する為のプランを練らなければいけない。次に建築部材の確保だがこれは俺の能力を駆使すれば一瞬で集めることができる」

「ちょっと待ってくれ!島野さん。いくら何でも一瞬で集めるってどういうことなんだい?」
ランドールさんからの質問だ。
出来れば言いたくはないがこの二人なら大丈夫だろう。

「時間停止を使います」

「「はあ??!!」」
そうなるよね。

「ここだけの話にして欲しいのだが、俺はアイルさんに鍛えられて時間を停止したり時間を旅することが出来るんだ」
二人は固まっていた。
なんだかごめん・・・

「だから時間を止めてしまえば俺にとっては数日でも、皆にとっては一瞬なんだよね・・・」

「駄目だ・・・流石について行けない・・・島野さんは時間を止めたり過去や未来に行けるってことですか?」

「・・・そうだ」
頭を抱えるマーク、そして未だフリーズしているランドールさん。

「じゃあ過去に戻ってこうなることを伝えたらいいじゃないですか?違いますか?」

「それは可能だが、俺はそういう事はしないと誓っているんだ」

「どうしてですか?」
片眉を上げるマーク。

「時間軸はデリケートなんだよ、簡単な話、そうすることによって今の俺達が消滅することになる。ここでしている会話も全て無かったことになるんだ。俺はそういうことはしたく無いんだよ」

「・・・島野さんらしいですね、分かりました。で?まずは増設プランですね?」

やっと回復したランドールさんが、
「増設プランは数時間で出来るよ」
嬉しい事を言ってくれた。

「それはどういうことですか?」

「建設当時の図面は残っているし、島野さんは覚えていないのかい?いつでも増設可能な建設の間取りにすると打ち合わせた事を・・・」
そうだった!
うっかり忘れていた!

「そうでしたね・・・忘れていました・・・」
大事な事を忘れていた様だ・・・俺は何を取り乱していたのだか・・・
まだまだ修行が足りんな。
ちょっと恥ずかしいぐらいだ。

「お願いできますか?」

「直ぐに取り掛かるよ、フランの私の事務所に連れて行って貰えるかい?」

「了解しました」

「マーク、出来る限りの大工を集めてくれ。夜には突貫工事を開始する!多ければ多いだけいい!」

「畏まりました!」
ランドールさんを伴ってランドールさんの事務所に転移した。
ランドールさんは事務所の棚に手を伸ばしてスーパー銭湯の図面を取り出していた。
デスクの上に図面を拡げている。

「島野さん、見て下さい。此処と、此処と、此処です。拡張できるようにするには、まず柱を組んで・・・」
俺とランドールさんは夢中になって打ち合わせを行った。



打ち合わせを終えてサウナ島に帰ってくると俺は時間を停止した。
停止した時間の中で、俺は一人建築部材の確保に勤しんだ。
森に入り樹を伐採し大量の木材を確保する。
そして万能鉱石を大量に使ってパイプや釘などの鉄材を準備する。
体感時間としては二十四時間ぐらいだろうか?
能力全開で作業を行った。
準備した建設部材の全てをスーパー銭湯の裏側に運んだ。
途中で俺が時間を止めていることが気になったのか、アイルさんが見に来ていた。

「守、何をやっているのかしら?」

「アイルさん、ちょっとやらかしましてね」

「何をしたの?」

「スーパー銭湯のキャパが格段に足りていません、増設を行う必要があるんですよ」

「そういうことね」

「今日の夜には突貫工事を行いたいので時間を止めているんです」

「ほどほどになさいよ」

「畏まりました」
アイルさんはやれやれと言った表情で何処かに行ってしまった。
心配かけてすいません。

本来であれば閉店時間は深夜十二時である。
しかし今日は突貫工事を行わなければならない。
少しでも早く手を加える必要がある。
夜十時の段階だがまだ入店を待つお客の行列がそこにはあった。
俺は急遽閉店することを店内にアナウンスさせた。
そして申し訳ないと次回無料券を配布することにした。
入店待ちのお客も同様にだ。
有難い事に逆にお礼を言ってくれる客までいた。
全員がスーパー銭湯を退去し終えたのは夜の十時半だった。
嬉し事に文句を言う客は一人も居なかった。
大変申し訳ない。



俺の前に援軍が勢揃いしていた。
ランドールさんの所の大工達、オクボス、ゴブスケが率いる魔物大工集団。
他にもタイロンやメルラド、メッサーラの大工集団も駆けつけていた。
そしてゴンガスの親父さんとその弟子達もいる。
総勢四百名にも及ぶ職人の一団が道具を片手に集合していた。
全員気合の入った表情で力が漲っていた。
当然の様に島野一家と旧メンバーも集合している。
本当にありがたい!
何てお礼を言ったらいいんだ。
俺のピンチにここまでの者達が駆けつけてくれるなんて・・・
お前ら最高かよ!

「皆!集まってくれてありがとう!まずはお礼を言わせてくれ!」
俺は手を挙げて皆に注目して貰う様にした。

「ガハハハ!そんな事は必要なかろう?皆お前さんには何かしらの恩義を感じておるからの」

「そうですよ!島野様!こんな事で恩を返せるとは思っていませんが、俺達に任せて下さい!」
ゴンガスの親父さんとオクボスに言われてしまった。
嬉しい事を言ってくれる。

「そうか、助かる!じゃあ早速だが、スーパー銭湯の増設工事を開始する!俺とランドールさんで指揮を執る、よろしくな!お前達!」

「「「「おお!!!!!」」」」
地面が揺れているのではないかという程の大合唱が響き渡っていた。



ランドールさんと俺の指揮の元、突貫工事が開始された。
親方衆が指揮に従い大工達に檄を飛ばしている。
全員動きがキレキレだ。
ここぞとばかりに本領を発揮している。
とても熱気に溢れていた。
全員がやる気に満ちた表情をしており、鼻息荒く大工道具を振っていた。

ゴンガスの親父さんはロッカーや小物を中心に必要となる物は既にメモを渡してある。
鍛冶師集団を引き連れて赤レンガ工房に籠り出した。
その様子は正に鉄火場と成っている。
鉄を打つ音がサウナ島に木霊する。

オクボスやゴブロウ達魔物集団は、そのパワーを発揮して重機の如く建築部材を運んでいた。
実に頼りになる。
全員熱気に包まれて作業に没頭していた。
集中力が半端ない。
ランドールさんも指揮に余念が無い。
血気盛んに激を飛ばしていた。

小休憩時にはメルルと大将が現れて全員におにぎりを配ってくれていた。
気が付くと神様ズも数名集まり、五郎さんまで口に釘を咥えて金槌を振っていた。
オズとガードナーも作業に交じっており、ゴンズさんは漁師集団を引き連れて細かい作業を手伝ってくれていた。
本当に助かる。
この人達は誰からスーパー銭湯の話を聞いたのかは知らないが、俺のピンチに駆けつけてくれたみたいだ。
本当に頭が下がる想いだった。



そして遂に明け方を迎えた。
実に突貫工事は完成した。
なんとものの半日でスーパー銭湯の増設工事が完成してしまっていた。
これはもの凄い偉業だ。
後日『スーパー銭湯の奇跡の突貫工事』と評される程の出来事だった。
完成したスーパー銭湯を皆で胸を張って眺めていた。
俺はこんなに心強い仲間達が居たんだと改めて知ることになった。
感無量で俺はスーパー銭湯を眺めていた。

不意に俺の肩に手が置かれた、
「島野!お前え!またえれえ事をやっちまったな!ええ!」
五郎さんだった。

「いえ、これは俺の意業でも何でもないですよ。皆のお陰ですよ」

「だからよ!お前えの為にこんだけの者達が集まったって事だろうが?こんな事は普通はあり得ねえだろうが?そんだけお前えは愛されているってなことよ!」

「はい!嬉しい限りです!」
少々照れるがそう受け止めたい。
こんなにも俺は愛されているんだと。

「さあ!皆な飯にしましょう!全て俺の奢りです!」
この俺の発言に容赦なく声が返ってくる。

「待ってました!その一言!」

「俺は朝から飲むぞ!」

「今日の仕事は無しだ!宴会だ!」

「腹がはちきれるまで食うぞ!」
好きに騒いでいた。
嬉しいことだ、遠慮なくもっと騒いでくれ!
俺は最高の一日を迎えれそうだ。



結局の所、スーパー銭湯は最大収容人数は三千名となっていた。
お風呂は内風呂も外風呂も拡張され、更にはジェットバスも増設された。
サウナは最大収容人数はなんと二百名となり、これで当面サウナ渋滞は起きないと予想される。
水風呂も倍以上に拡張され、外気浴場も増設された上にインフィニティーチェアーが百台以上になっていた。
このインフィニティーチェアーだが、ゴンガスの親父さんに造って貰った物だ。

「これぐらいお手の物だの」
と親父さんは宣っていた。
他にもロッカーや家具なども急ピッチで造ってくれていた。
流石は物創りの神である。
後日いくら請求されるかは知らないが、親父さんはまた稼ぐことが出来たと喜んでいた。
言い値で結構!
きっちりと払わせて頂きますよ!
そして大食堂も増設されている。
流石に厨房までとはいかなかったが、ここは後日いくらでも手を加えることは出来る。

そもそも大食堂の厨房は今後の新メニュー開発用に必要な器具等を、いつでも置けるようにと広めに造られている。
どうとでもなるだろう。
後は人材の問題となるのだが、その辺はエリカに丸投げでどうにでもなる。
そもそもシフトはダブついているのだから、もしかしたら今の人員だけでも充分に凌げるのかもしれない。
それにしても・・・何とかなってしまったな。
皆に感謝だ!

結局この日は朝から宴会となり、真面にお客の動向などをチェックすることなど出来なかった。
こんな時ぐらいいよね?
明日以降でいいよね?
多分・・・
にしても楽しかったー!こんな宴会ならいつでもウェルカムです!