それに嬉しい事にエアーズロックからこの様な申し入れがあった。
それは、
(守よ・・・サウナ島の周りをゆっくりではあるのだが、周回しようと思う・・・どうかな?)
(エアーズロック・・・お前・・・最高かよ!)
(ホホホ・・・褒めてくれるか・・・これはやりがいがあるではないか・・・)
(ああ・・・でも大丈夫なのか?)
(ん?・・・それは神力のことか?・・・)
(そうだ・・・)
(前にたくさん貰ったから大丈夫だ・・・それに世界樹からの神気がここではダイレクトに取り込める・・・問題ない・・・)
(分かった・・・よろしく頼む・・・)
(あい分かった・・・)
これが景色の満足度を格段に向上させた。
エアーズロックはおよそ三ヶ月かけてサウナ島上空を一周していた。
毎日眺める景色が変わると評判が高い。
景色という物は気分を高揚させてくれる。
本当に嬉しい申し入れだった。
そして遂にそいつは現れた。
突如上空から俺の元に降臨した。
エアーズロックの分身体だ。
がっちりマッチョの体躯で巨人族並みの高身長。
ワイルドさを滲みだしている顔にはアイリスさん同様に、紋章の様な柄が刻まれていた。
実に好感が持てる男性だった。
スポーツマン的な爽やかさもある。
思わずハイタッチしたくなる、そんな存在だった。
「お前、エアーズロックだな?」
笑顔で俺は向かえていた。
「そうだ、守よ。否、ここはそう呼んではならんな。何と呼んだらいい?」
「ん?別に守で良いんじゃないか?どうしてだ?」
「本体ならばそれでも良いと思うが、俺は忠誠を誓いたいと思うのだ」
そう言えばそうだったな、俺に従うと言っていたな。
律儀な奴だな、そういうの嫌いじゃないけどさ。
「そうだな・・・エアーズロックはアイリスさんと兄弟なんだろ?だったら彼女と同じで、守さんでいいんじゃないか?」
「守さんか・・・しっくりくるな」
エアーズロックは頷いていた。
「てかエアーズロック、アースラさんとアイリスさん、それとスカイクラウンに挨拶に行かなくていいのか?」
せっかく分身体を得られたんだからまずは親族に報告すべきでは?
「いや、ここは先ずは守さんに挨拶すべきだろう。母上ならばそうせよと言うだろう」
「そうなのか?・・・」
アースラさんの教育がどういう物なのかはよく分からんが、そう言うのならそれでいいのだろう。
にしてもスカイクラインからは想像もつかないぐらいの好青年だ。
父親があれであった事が反面教師になったのかもしれないな。
「とは言ってもここは先ずは親族に挨拶に行ってくれ、その後で俺は良いからさ」
「そうか・・・そこまで言うなら行かせて貰おう、では後ほど」
手を挙げて俺に挨拶をした後にエアーズロックは飛び立っていった。
こいつには何をして貰おうかな?
まぁ好きに過ごしてくれればいいかな?
何となくだがこいつは何処でもやっていける様な気がする。
心強い援軍だな。
来なくていいと思っていたが間違いだったみたいだ。
でも本当にスカイクラウンの息子なのだろうか?
甚だ疑問だ・・・
それぐらいの好青年だ。
その後、結局エアーズロックはアイリスさんとアースラさんに挨拶を済ませた後に、俺の所に戻ってきた。
スカイクラウンは・・・無視したらしい・・・
何なんだこの家族は?
残念以外の表現が俺には出来無い。
全てはスカイクラウンが悪い。
それは間違い無い。
実際、味を占めたスカイクラウンはスーパー銭湯の主となっていた。
今では見かけない時が無い程だ。
お前はアイリスさんに殴られていろ!
だが生傷の絶えないスカイクラウンはちょっと見てられないな。
でもここは口は挟まないでおこうと思う。
巻き込まれたくは無いからね。
やれやれだ。
そうとも言ってはいられず、俺はスカイクラウンにバイトをさせることにした。
顔を腫らしたスカイクラウンを不憫に思ってしまったのだ。
スカイクラウンにやらせたバイトは転移扉を開く仕事だった。
本当は外にさせたい仕事があったのだがまだ少し先の為、今はこれで良いだろうと安易に考えた。
受付の転移扉の開閉をエクスが頑張っているが、エクスはちょっと労働時間が長いと思っていたのだ。
その隙間時間をスカイクラウンにさせることにしたのだ。
決して上級神が行う様なバイトでは無いのだが・・・
そしてスカイクラウンの働きぶりは・・・酷かった・・・
よくサボるし、適当だし、人の話を聞いていない。
流石に俺もこいつを擁護することは出来なかった。
「スカイクラウン・・・クビです」
「な!・・・」
「なじゃねえよ!・・・お前・・・バイトを舐めているだろう?」
「否・・・そんな気は・・・」
「お前なあ・・・サボるし・・・適当だし・・・第一に人の話を聞いて無いだろう?こっちとしては迷惑なんだよ!」
実際苦情が後を絶えないのだ。
転移扉を空いて貰う約束の時間に空かなかったり、どうでもいい時間に転移扉が空いたり、到底加護できるものではなかったのだ。
「そうか・・・」
「クビだ!とっとと帰れ!」
頭を下げたスカイクラウンだが翌日にはスーパー銭湯で寛いでいた・・・
俺もこいつに本気でバックドロップを決めたい思いに駆られていた。
否、此処は三角締めで落としてやろうか?
本気で締めても神だから死なないと思うのだが?
畜生!時代が昭和なら問答無用で締めていたぞ・・・そうはいかないよね・・・
やれやれだ。
エアーズロックの開発の完成は近い。
そしてここでスーパー銭湯の別館の試運転が行われることになった。
ここは自慢させて頂こう。
否!自慢させて下さい!
ではお耳を拝借。
まずはプレオープンとまではいかない身内のみのお試しだ。
メンバーは島野一家と旧メンバーに加えてエリカ、そして神様ズとゼノンとエリス。
メンバーは限定させて貰った。
本当は神様ズは御遠慮願いたかったのだが、珍しくアンジェリっちにおねだりされてしまったのだ。
今では彼女も上級サウナーだ。
毎日サウナは欠かさないということだった。
そしてそのおねだりを認めた俺が悪い・・・
ここぞとばかりに他の神様ズが、アンジェリっちがいいのなら自分もいいだろ?と無遠慮に混じってきた。
しょうがない・・・認めてしまった俺が悪い・・・
まあいいだろう・・・
よくアンジェリっちからオリビアさんに俺は甘いと怒られていたが、俺はアンジェリっちにも甘いみたいだ。
やれやれだ。
この姉妹には俺は振り回されるみたいだ。
さて、ここは気分を変えよう。
まずスーパー銭湯の別館は男女兼用である。
その為スーパー銭湯の別館に行くには水着の着用が必須となっている。
その理由は明らかだ。
フードコートや他のレストランから角度によっては見える位置にあるからだ。
これを嫌う人が中には居るかもしれないがここは譲れない。
もし自分の体形が気になるのなら、痩せるなり筋トレするなりして欲しい。
すまないがここは気を使う気にはなれない。
ということにしようかと思ったのだが、ここは考えを改めて七分丈の衣服を準備することにした。
透けて見えない様に色は濃い茶色にしてみた。
このスーパー銭湯の別館専用の衣服だ。
これであれば汗をかいてもいいだろうし、乾きやすい素材を使用すればいい。
サイズも3Sサイズから6Lサイズまである。
リズさんなら3Sかな?
巨人族なら5Lぐらい必要だろう。
俺は2Lで充分です。
ちょっとデカいぐらいだ。
スーパー銭湯の別館に工夫を凝らして見えない様にすることも出来るのだが、そうすると外気浴での景観が損なわれることが判明した。
俺は外気浴場での景観を最優先した。
それは景観に伴って整いは深くなることを俺は知っているからだ。
ここは譲る訳にはいかない。
そんな拘りも実は細部にあったりする。
まあ伝えれるだけ伝えてみようと思う。
別館のサウナだがまずはバレルサウナを造った。
規模感としては最大収容人数は八名だ。
これを十台作製した。
勿論セルフロウリュウが行えるが、自身の経験からこれは誰もがやりたがると知っている。
その為、砂時計が設置されておりその砂時計の砂が下に溜まってからセルフロウリュウをする様にとの張り紙がされている。
砂時計は七分で底に溜まる。
これは絶対的なマナーとして遵守させるつもりだ。
というのも過剰なセルフロウリュは苦痛でしか無いからだ。
もしそれを守らなかった者がいたら、出禁にしてもいいと俺は考えている。
一緒にサウナを楽しんでいるサウナーに気を使えない様な者は二度と来て貰わなくても構わない。
同じサウナーの満足度を無視する様な輩は排除すべきだろう。
俺はそう考えている。
それにこの世界には既にサウナ文化は根付いている。
それを無視する様な輩は二度と敷居を跨いで欲しくない。
此処だけは譲れない。
次のサウナ検定の問題にしようかな?
そしてアロマ水だが、レモン、ハーブ、カモミール、ローズ等を取り揃えており、好きに選べるようになっている。
バレルサウナゾーンに入る所で選べることになっている。
女性人気はローズだろうか?
個人的にはレモンが好きだ。
すっきりとした爽快感が堪らない。
でもハーブも良いよね?
まあ此処は好みだな。
そしてテントサウナもある。
その数も十台だ。
収容人数は少なく三人しか入ることはできない。
このテントだがアラクネの糸で造られている。
伸縮性、頑丈さに加えて撥水性もあるのだ、テントサウナのテントに使うには最高の素材だ。
このテントサウナもセルフロウリュウが行える。
アロマ水のフレーバーはバレルサウナと同様である。
こちらもテントサウナゾーンに入る所で選べるようになっている。
少人数でテントサウナを楽しんで貰いたい。
友人や家族とテントサウナに入って貰いたいものだ。
此処はセルフロウリュウの規制は行わない。
好きにしてくれればいい。
テントサウナは他人と入ることは考えづらいからね。
身内で是非楽しんで貰いたい。
そして水風呂だが二種類ある。
まずは泳げる水風呂だ。
それもただの水風呂ではない。
滝を備え付けてあるのだ。
それなりの水量の水がドバドバと流れるようになっている。
これを頭から受けるのは気持ちがいいだろう。
更に滝の根本には魔石が嵌め込まれており、魔力を流すと滝の水量が増すのである。
ギルで試してみたが相当な水量になっていた。
俺には魔力が無いのが残念だが、当然の如く神石が嵌め込まれている。
神力を流せば同様に滝の水量が増すのだ。
水温はおよそ十六度前後、嬉しい温度だ。
これは滝行では無い事を強調したい。
あくまで水風呂である。
水風呂は決して修業では無いのだよ。
もう一つの水風呂は炭酸水風呂だ。
ここはフレイズのバイトの本数が増えることになる。
あいつは今ではほぼ毎日バイトに明け暮れている。
呼べば喜び勇んで現れるのだから笑える。
何時の間にか俺は『念話』で繋がっていたからね。
まあこちらから一方的に繋げたのだが・・・
あいつの扱いはこれぐらいでいいだろう。
始めて『念話』が繋がった時にはフレイズは無茶苦茶ビビっていた。
「島野・・・怖ええよ・・・」
等と呟いていた。
もう炭酸の無い生活はサウナ島ではあり得ない。
料理から飲み物、風呂から水風呂まで重宝されている。
因みにフレイズに任せなくとも、俺も実は二酸化炭素ボンベに二酸化炭素を貯めることが出来る。
フレイズの方法を真似てみたのだがあっさりと出来てしまった。
俺は久しぶりにやらかしたなと笑えてしまった。
よくよく考えてみたら結界と自然操作の火なんて初期の頃から出来ていた。
ゴンガスの親父さんの火事場にボンベを持ち込んだり、サウナに持ち込んでみたりと要らん事をしていた過去は戻っては来ない。
無駄な時間を過ごしてしまったみたいだ・・・
一瞬時間旅行で過去に戻って自分に教えてやろうかとも思ったが止めておいた。
それは違うと思ったからだ。
こんなやらかしもあっていいだろう。
無駄の中にも何かしらの意味があるのかもしれない。
実際、試行錯誤して楽しかったしね。
それに時間軸は極力弄りたくはない。
過去の自分にアドバイスをするなんてもっての外だ。
そりゃあそんなことが出来たらそうしたいと何度も思ったことではある。
でもそれをしてしまうことは余りに人生がつまらないものになると思われた。
時に人生の選択で間違ったことや大きなミスを犯してしまったことも俺にはある。
でもそれを修正することはあまりにつまらない。
それに過去のやらかしがあるから今の俺がいるのだ。
此処を間違いたくはないのだ。
間違ってもいいじゃないか、こうやって人は成長していくのだからさ。
あっ!もう人では無かったな・・・
そんなことはいいとしてだ。
別館の配置としては、泳げる水風呂と炭酸水風呂を囲むようにバレルサウナとテントサウナが配置されている。
そしてこの炭酸水風呂と泳げる水風呂だがかなり大きい。
泳げる水風呂に関しては五十人が同時に入れるぐらいデカい。
これは贅沢だ。
因みにどこからでも飛び込み可能だが、掛け水ゾーンが四カ所設けてある。
今では掛け水をせずに水風呂に入る者はまず見かけない。
良い傾向である。
まぁ見かけたらガードナーにしょっ引て貰うことにしようと思う。
あいつもサウナ愛好家だしね。
俺が何も言わずとも指導してくれるだろう。
そしてこの別館に繋がるのは転移扉だ。
最終的にはスーパー銭湯の受付の先に転移扉が設置され、その扉は常時解放とする予定だ。
転移扉の脇にはスタッフがおり入場者をチェックすることになる。
今はまだその様にはしていない。
現在は試運転の為、今は俺の家のリビングに転移扉は設置してある。
試運転を終えた後に、プレオープン時に転移扉は受付の先に設置する予定である。
そして外気浴場だが、景観の素晴らしいエアーズロックの外縁部にてインフィニティーチェアーが百台以上設置されている。
これは満足出来るだろう。
ここでインフィニティーチェアーの奪い合いは行われないだろう。
台数が物を言っている。
もし足らないなら速攻で増設するつもりだ。
それぐらいのスペースは確保出来ている。
実に別館は広大なスペースなのだ。
更にこれは好みになるのだがエスタンザチェアーも置かれている。
エスタンザチェアーはサウナ愛好家の間では有名な椅子で、後ろに傾斜している椅子である。
その強度も高く安定性がある。
俺の好みはインフィニティーチェアーだが、サウナフレンズの飯伏君はエスタンザチェアーの方が好きだと以前言っていた。
好みは分かれて当然だ。
エスタンザチェアーもそれなりに良い物だ。
整いはちゃんと得られるしね。
そしてここにも『パパとギルの整い部屋』がある。
当たり前の様にゼノンも使うだろう。
扉に備え付けてある神石に付与してある『限定』には、ゼノンも通れるようにしてある。
あいつも使うと言うに決まっているからね。
既に折り込み済みだ。
そろそろ神様ズにも『黄金の整い』を公表しても良い物なのだが、まだ創造神の爺さんのゴーサインは出ていない。
まだ秘匿しなければならないが、五郎さんはとっくに気づいているだろう。
それにゴンガスの親父さんもかなり怪しい。
あの二人は目聡いからね。
まぁ問われても俺は黙秘するしか無いのだが・・・
でも二人は何かを察してくれているのだろう。
特に何も言ってはこない。
今後も二人からは問い詰められることは無いだろうと思う。
多分・・・
そしてサウナと水風呂ゾーンを抜けた先には屋台街と外気浴場がある。
濡れた衣服の儘では不味いだろうと、乾燥部屋が二十室ある。
この乾燥部屋だが温風が流れる仕様になっており、ものの数分で衣服を乾かすことが出来る。
それもその筈で、温風が上下左右から流れるのだ。
更に上部にはファンが付いており、常時換気されている為、湿気も直ぐに無くなってしまう。
これも魔石バージョンと神石バージョンがある。
そしてその屋台街の先には休憩所があり、最大で五百名が収容できることになっている。
いろいろな場所に椅子やソファーがふんだんに置かれており、好きに寛ぐことができる。
此処には地味にお金が掛かっている。
特にソファーなどの家具類にはお金が掛かった。
ゴンガスの親父さんはウハウハである。
大量の家具の発注に眼を輝かせていた。
ドワーフの弟子達だけでは無く、既に独り立ちしているゴブスケにも手伝わせて赤レンガ工房に引き籠っていた。
そして細かな気遣いとして、この休憩所には自由に使えるバスタオルと毛布がある。
こちらもアクアマリンさんとウィンドミルさんのバイトの本数が増えそうだ。
既に別館の使用時に着る七分丈の衣服の導入を決めた際に、二人には前もって話してある。
「へえー、そうなんだー」
「いいよー」
相変わらずの抜け感満載の返事を頂いた。
この人達の印象はパ〇ィーだ。
今ではこの二人はサウナ島の住人となっている。
サウナ島に帰ってくると必ずといっていいほど見かける。
どうやら寮に住んでいるらしい。
エリカから新たな家を造りましょうか?と言われたみたいだが、要らないと言われたらしい。
特別扱いしてくれるなとも言われたらしい。
気安くていいじゃないか。
俺はそういうのは好きだな。
まぁこの二人らしいとも思える。
俺はこの二人の気軽さが好きだ。
不思議と落ち着くのだ。
そしてこの休憩室には漫画が自由に読める様になっている。
その冊数は一万冊を超える。
漫画喫茶とまではいかないが、漫画を読み漁る者達で溢れかえるだろうと思う。
今では漫画の複写を俺は行ってはいない。
漫画の複写に関してはハルが印刷所で頑張っている。
今ではあの子も改心し、よく頑張ってくれている。
マリアさん曰く、あの子は漫画編集者としてもセンスがあると唸っていた。
漫画の画角の指摘や、ストーリーへの意見が的確で参考にしているということらしい。
よかった、よかった。
そして先に述べた屋台街だが、せっかくなので内容を話させて頂こう。
その名の通りお酒を提供しているのだが高アルコールの飲料は提供していない。
ゴンガスの親父さん当たりからは文句も出そうなものであるのだがここは譲れない。
酔っぱらった状態でのサウナは控えて欲しいからだ。
ただ、サウナ明けには生ビールや、キンキンに冷えたワインや、レモンサワーは飲んで欲しい。
その為、提供するアルコールは生ビール、ワイン、サワー類に限定している。
因みに『鑑定』でアルコール度数を調べてみたところ、生ビールは5%、ワインは8%、サワーは6%だった。
これぐらいなら酩酊する者は居ないだろう。
逆にこれぐらいで酩酊するぐらいなら下戸に違い無く、そういった人がアルコールを摂取するとは思いづらい。
でも念の為アルコールは程々にすることと、サウナ前のアルコールは控える様にとの張り紙は至る所に掲示されている。
ここまでしてどうにかなったとしても、こちらとしては責任は持てない。
後は利用者の大人の対応を望むばかりだ。
余りに無謀な利用をしている者は出禁にするまでだ。
こちらにも客を選ぶ権利がある。
間違ってもお客様は神様だ!等という考えは持っていない。
というよりこっちが神だっての!
舐めて貰っては困る。
要らない会話があったみたいだ、失礼した!
さて話を屋台街に戻すとしよう。
屋台街を設けるにあたって、一番の問題は決済方法をどうするのかというものだった。
これが日本であればバーコードで管理し、退店時に決済が可能である。
カードや現金やQRコード等様々だ。
今の所それに近しい決済方法は、魔法や神の能力を駆使したとしても考えつかなかった。
そこでここは明朗会計にする事にした。
要は現金決済である。
その為、財布や貴重品を保管するロッカーが必要と、ここもゴンガスの親父さんに発注を行うことになった。
親父さんは有頂天になっていた。
今回のスーパー銭湯の別館の建設に当たっては、ある意味親父さんが一番利益を得ているかもしれない。
それぐらい親父さんに注文が殺到することになってしまったのだ。
でもここは流石の親父さんだ。
その全ての注文に対する工期を守っていた。
ちょっと俺は親父さんを舐めていたのかもしれない。
物造りの神の異名は伊達ではなかった。
まぁ、普段の飲んだくれている親父さんの印象が強いからここは勘弁して欲しい。
そして要らないことに、ここで得た利益を基にサウナ島で酒工房を造らせろと親父さんが言い出した。
そんなことになるだろうとは思ってはいたのだが案の定である。
まぁ別に困ることは無いからお好きにどうぞと許可は出したが、ちゃんとそれなりの賃料は頂くことにした。
到底無料とはいかない。
あと困ったことに、美容室や服屋の様に売歩には出来なかった。
その為エンゾさんに相場を教えて貰って、賃料は固定で設定させて貰う事にした。
ここは致し方あるまい。
親父さんも唸ってはいたが、こればかりはどうしようも無い為飲み込んで貰った。
そもそも赤レンガ工房で好きに無料で鍛冶作業を行っているのだ。
これぐらいは飲んで貰ってもいいだろう。
そもそも親父さんは金に執着し過ぎだっての!
いい加減にして欲しい。
やれやれだ。
それは、
(守よ・・・サウナ島の周りをゆっくりではあるのだが、周回しようと思う・・・どうかな?)
(エアーズロック・・・お前・・・最高かよ!)
(ホホホ・・・褒めてくれるか・・・これはやりがいがあるではないか・・・)
(ああ・・・でも大丈夫なのか?)
(ん?・・・それは神力のことか?・・・)
(そうだ・・・)
(前にたくさん貰ったから大丈夫だ・・・それに世界樹からの神気がここではダイレクトに取り込める・・・問題ない・・・)
(分かった・・・よろしく頼む・・・)
(あい分かった・・・)
これが景色の満足度を格段に向上させた。
エアーズロックはおよそ三ヶ月かけてサウナ島上空を一周していた。
毎日眺める景色が変わると評判が高い。
景色という物は気分を高揚させてくれる。
本当に嬉しい申し入れだった。
そして遂にそいつは現れた。
突如上空から俺の元に降臨した。
エアーズロックの分身体だ。
がっちりマッチョの体躯で巨人族並みの高身長。
ワイルドさを滲みだしている顔にはアイリスさん同様に、紋章の様な柄が刻まれていた。
実に好感が持てる男性だった。
スポーツマン的な爽やかさもある。
思わずハイタッチしたくなる、そんな存在だった。
「お前、エアーズロックだな?」
笑顔で俺は向かえていた。
「そうだ、守よ。否、ここはそう呼んではならんな。何と呼んだらいい?」
「ん?別に守で良いんじゃないか?どうしてだ?」
「本体ならばそれでも良いと思うが、俺は忠誠を誓いたいと思うのだ」
そう言えばそうだったな、俺に従うと言っていたな。
律儀な奴だな、そういうの嫌いじゃないけどさ。
「そうだな・・・エアーズロックはアイリスさんと兄弟なんだろ?だったら彼女と同じで、守さんでいいんじゃないか?」
「守さんか・・・しっくりくるな」
エアーズロックは頷いていた。
「てかエアーズロック、アースラさんとアイリスさん、それとスカイクラウンに挨拶に行かなくていいのか?」
せっかく分身体を得られたんだからまずは親族に報告すべきでは?
「いや、ここは先ずは守さんに挨拶すべきだろう。母上ならばそうせよと言うだろう」
「そうなのか?・・・」
アースラさんの教育がどういう物なのかはよく分からんが、そう言うのならそれでいいのだろう。
にしてもスカイクラインからは想像もつかないぐらいの好青年だ。
父親があれであった事が反面教師になったのかもしれないな。
「とは言ってもここは先ずは親族に挨拶に行ってくれ、その後で俺は良いからさ」
「そうか・・・そこまで言うなら行かせて貰おう、では後ほど」
手を挙げて俺に挨拶をした後にエアーズロックは飛び立っていった。
こいつには何をして貰おうかな?
まぁ好きに過ごしてくれればいいかな?
何となくだがこいつは何処でもやっていける様な気がする。
心強い援軍だな。
来なくていいと思っていたが間違いだったみたいだ。
でも本当にスカイクラウンの息子なのだろうか?
甚だ疑問だ・・・
それぐらいの好青年だ。
その後、結局エアーズロックはアイリスさんとアースラさんに挨拶を済ませた後に、俺の所に戻ってきた。
スカイクラウンは・・・無視したらしい・・・
何なんだこの家族は?
残念以外の表現が俺には出来無い。
全てはスカイクラウンが悪い。
それは間違い無い。
実際、味を占めたスカイクラウンはスーパー銭湯の主となっていた。
今では見かけない時が無い程だ。
お前はアイリスさんに殴られていろ!
だが生傷の絶えないスカイクラウンはちょっと見てられないな。
でもここは口は挟まないでおこうと思う。
巻き込まれたくは無いからね。
やれやれだ。
そうとも言ってはいられず、俺はスカイクラウンにバイトをさせることにした。
顔を腫らしたスカイクラウンを不憫に思ってしまったのだ。
スカイクラウンにやらせたバイトは転移扉を開く仕事だった。
本当は外にさせたい仕事があったのだがまだ少し先の為、今はこれで良いだろうと安易に考えた。
受付の転移扉の開閉をエクスが頑張っているが、エクスはちょっと労働時間が長いと思っていたのだ。
その隙間時間をスカイクラウンにさせることにしたのだ。
決して上級神が行う様なバイトでは無いのだが・・・
そしてスカイクラウンの働きぶりは・・・酷かった・・・
よくサボるし、適当だし、人の話を聞いていない。
流石に俺もこいつを擁護することは出来なかった。
「スカイクラウン・・・クビです」
「な!・・・」
「なじゃねえよ!・・・お前・・・バイトを舐めているだろう?」
「否・・・そんな気は・・・」
「お前なあ・・・サボるし・・・適当だし・・・第一に人の話を聞いて無いだろう?こっちとしては迷惑なんだよ!」
実際苦情が後を絶えないのだ。
転移扉を空いて貰う約束の時間に空かなかったり、どうでもいい時間に転移扉が空いたり、到底加護できるものではなかったのだ。
「そうか・・・」
「クビだ!とっとと帰れ!」
頭を下げたスカイクラウンだが翌日にはスーパー銭湯で寛いでいた・・・
俺もこいつに本気でバックドロップを決めたい思いに駆られていた。
否、此処は三角締めで落としてやろうか?
本気で締めても神だから死なないと思うのだが?
畜生!時代が昭和なら問答無用で締めていたぞ・・・そうはいかないよね・・・
やれやれだ。
エアーズロックの開発の完成は近い。
そしてここでスーパー銭湯の別館の試運転が行われることになった。
ここは自慢させて頂こう。
否!自慢させて下さい!
ではお耳を拝借。
まずはプレオープンとまではいかない身内のみのお試しだ。
メンバーは島野一家と旧メンバーに加えてエリカ、そして神様ズとゼノンとエリス。
メンバーは限定させて貰った。
本当は神様ズは御遠慮願いたかったのだが、珍しくアンジェリっちにおねだりされてしまったのだ。
今では彼女も上級サウナーだ。
毎日サウナは欠かさないということだった。
そしてそのおねだりを認めた俺が悪い・・・
ここぞとばかりに他の神様ズが、アンジェリっちがいいのなら自分もいいだろ?と無遠慮に混じってきた。
しょうがない・・・認めてしまった俺が悪い・・・
まあいいだろう・・・
よくアンジェリっちからオリビアさんに俺は甘いと怒られていたが、俺はアンジェリっちにも甘いみたいだ。
やれやれだ。
この姉妹には俺は振り回されるみたいだ。
さて、ここは気分を変えよう。
まずスーパー銭湯の別館は男女兼用である。
その為スーパー銭湯の別館に行くには水着の着用が必須となっている。
その理由は明らかだ。
フードコートや他のレストランから角度によっては見える位置にあるからだ。
これを嫌う人が中には居るかもしれないがここは譲れない。
もし自分の体形が気になるのなら、痩せるなり筋トレするなりして欲しい。
すまないがここは気を使う気にはなれない。
ということにしようかと思ったのだが、ここは考えを改めて七分丈の衣服を準備することにした。
透けて見えない様に色は濃い茶色にしてみた。
このスーパー銭湯の別館専用の衣服だ。
これであれば汗をかいてもいいだろうし、乾きやすい素材を使用すればいい。
サイズも3Sサイズから6Lサイズまである。
リズさんなら3Sかな?
巨人族なら5Lぐらい必要だろう。
俺は2Lで充分です。
ちょっとデカいぐらいだ。
スーパー銭湯の別館に工夫を凝らして見えない様にすることも出来るのだが、そうすると外気浴での景観が損なわれることが判明した。
俺は外気浴場での景観を最優先した。
それは景観に伴って整いは深くなることを俺は知っているからだ。
ここは譲る訳にはいかない。
そんな拘りも実は細部にあったりする。
まあ伝えれるだけ伝えてみようと思う。
別館のサウナだがまずはバレルサウナを造った。
規模感としては最大収容人数は八名だ。
これを十台作製した。
勿論セルフロウリュウが行えるが、自身の経験からこれは誰もがやりたがると知っている。
その為、砂時計が設置されておりその砂時計の砂が下に溜まってからセルフロウリュウをする様にとの張り紙がされている。
砂時計は七分で底に溜まる。
これは絶対的なマナーとして遵守させるつもりだ。
というのも過剰なセルフロウリュは苦痛でしか無いからだ。
もしそれを守らなかった者がいたら、出禁にしてもいいと俺は考えている。
一緒にサウナを楽しんでいるサウナーに気を使えない様な者は二度と来て貰わなくても構わない。
同じサウナーの満足度を無視する様な輩は排除すべきだろう。
俺はそう考えている。
それにこの世界には既にサウナ文化は根付いている。
それを無視する様な輩は二度と敷居を跨いで欲しくない。
此処だけは譲れない。
次のサウナ検定の問題にしようかな?
そしてアロマ水だが、レモン、ハーブ、カモミール、ローズ等を取り揃えており、好きに選べるようになっている。
バレルサウナゾーンに入る所で選べることになっている。
女性人気はローズだろうか?
個人的にはレモンが好きだ。
すっきりとした爽快感が堪らない。
でもハーブも良いよね?
まあ此処は好みだな。
そしてテントサウナもある。
その数も十台だ。
収容人数は少なく三人しか入ることはできない。
このテントだがアラクネの糸で造られている。
伸縮性、頑丈さに加えて撥水性もあるのだ、テントサウナのテントに使うには最高の素材だ。
このテントサウナもセルフロウリュウが行える。
アロマ水のフレーバーはバレルサウナと同様である。
こちらもテントサウナゾーンに入る所で選べるようになっている。
少人数でテントサウナを楽しんで貰いたい。
友人や家族とテントサウナに入って貰いたいものだ。
此処はセルフロウリュウの規制は行わない。
好きにしてくれればいい。
テントサウナは他人と入ることは考えづらいからね。
身内で是非楽しんで貰いたい。
そして水風呂だが二種類ある。
まずは泳げる水風呂だ。
それもただの水風呂ではない。
滝を備え付けてあるのだ。
それなりの水量の水がドバドバと流れるようになっている。
これを頭から受けるのは気持ちがいいだろう。
更に滝の根本には魔石が嵌め込まれており、魔力を流すと滝の水量が増すのである。
ギルで試してみたが相当な水量になっていた。
俺には魔力が無いのが残念だが、当然の如く神石が嵌め込まれている。
神力を流せば同様に滝の水量が増すのだ。
水温はおよそ十六度前後、嬉しい温度だ。
これは滝行では無い事を強調したい。
あくまで水風呂である。
水風呂は決して修業では無いのだよ。
もう一つの水風呂は炭酸水風呂だ。
ここはフレイズのバイトの本数が増えることになる。
あいつは今ではほぼ毎日バイトに明け暮れている。
呼べば喜び勇んで現れるのだから笑える。
何時の間にか俺は『念話』で繋がっていたからね。
まあこちらから一方的に繋げたのだが・・・
あいつの扱いはこれぐらいでいいだろう。
始めて『念話』が繋がった時にはフレイズは無茶苦茶ビビっていた。
「島野・・・怖ええよ・・・」
等と呟いていた。
もう炭酸の無い生活はサウナ島ではあり得ない。
料理から飲み物、風呂から水風呂まで重宝されている。
因みにフレイズに任せなくとも、俺も実は二酸化炭素ボンベに二酸化炭素を貯めることが出来る。
フレイズの方法を真似てみたのだがあっさりと出来てしまった。
俺は久しぶりにやらかしたなと笑えてしまった。
よくよく考えてみたら結界と自然操作の火なんて初期の頃から出来ていた。
ゴンガスの親父さんの火事場にボンベを持ち込んだり、サウナに持ち込んでみたりと要らん事をしていた過去は戻っては来ない。
無駄な時間を過ごしてしまったみたいだ・・・
一瞬時間旅行で過去に戻って自分に教えてやろうかとも思ったが止めておいた。
それは違うと思ったからだ。
こんなやらかしもあっていいだろう。
無駄の中にも何かしらの意味があるのかもしれない。
実際、試行錯誤して楽しかったしね。
それに時間軸は極力弄りたくはない。
過去の自分にアドバイスをするなんてもっての外だ。
そりゃあそんなことが出来たらそうしたいと何度も思ったことではある。
でもそれをしてしまうことは余りに人生がつまらないものになると思われた。
時に人生の選択で間違ったことや大きなミスを犯してしまったことも俺にはある。
でもそれを修正することはあまりにつまらない。
それに過去のやらかしがあるから今の俺がいるのだ。
此処を間違いたくはないのだ。
間違ってもいいじゃないか、こうやって人は成長していくのだからさ。
あっ!もう人では無かったな・・・
そんなことはいいとしてだ。
別館の配置としては、泳げる水風呂と炭酸水風呂を囲むようにバレルサウナとテントサウナが配置されている。
そしてこの炭酸水風呂と泳げる水風呂だがかなり大きい。
泳げる水風呂に関しては五十人が同時に入れるぐらいデカい。
これは贅沢だ。
因みにどこからでも飛び込み可能だが、掛け水ゾーンが四カ所設けてある。
今では掛け水をせずに水風呂に入る者はまず見かけない。
良い傾向である。
まぁ見かけたらガードナーにしょっ引て貰うことにしようと思う。
あいつもサウナ愛好家だしね。
俺が何も言わずとも指導してくれるだろう。
そしてこの別館に繋がるのは転移扉だ。
最終的にはスーパー銭湯の受付の先に転移扉が設置され、その扉は常時解放とする予定だ。
転移扉の脇にはスタッフがおり入場者をチェックすることになる。
今はまだその様にはしていない。
現在は試運転の為、今は俺の家のリビングに転移扉は設置してある。
試運転を終えた後に、プレオープン時に転移扉は受付の先に設置する予定である。
そして外気浴場だが、景観の素晴らしいエアーズロックの外縁部にてインフィニティーチェアーが百台以上設置されている。
これは満足出来るだろう。
ここでインフィニティーチェアーの奪い合いは行われないだろう。
台数が物を言っている。
もし足らないなら速攻で増設するつもりだ。
それぐらいのスペースは確保出来ている。
実に別館は広大なスペースなのだ。
更にこれは好みになるのだがエスタンザチェアーも置かれている。
エスタンザチェアーはサウナ愛好家の間では有名な椅子で、後ろに傾斜している椅子である。
その強度も高く安定性がある。
俺の好みはインフィニティーチェアーだが、サウナフレンズの飯伏君はエスタンザチェアーの方が好きだと以前言っていた。
好みは分かれて当然だ。
エスタンザチェアーもそれなりに良い物だ。
整いはちゃんと得られるしね。
そしてここにも『パパとギルの整い部屋』がある。
当たり前の様にゼノンも使うだろう。
扉に備え付けてある神石に付与してある『限定』には、ゼノンも通れるようにしてある。
あいつも使うと言うに決まっているからね。
既に折り込み済みだ。
そろそろ神様ズにも『黄金の整い』を公表しても良い物なのだが、まだ創造神の爺さんのゴーサインは出ていない。
まだ秘匿しなければならないが、五郎さんはとっくに気づいているだろう。
それにゴンガスの親父さんもかなり怪しい。
あの二人は目聡いからね。
まぁ問われても俺は黙秘するしか無いのだが・・・
でも二人は何かを察してくれているのだろう。
特に何も言ってはこない。
今後も二人からは問い詰められることは無いだろうと思う。
多分・・・
そしてサウナと水風呂ゾーンを抜けた先には屋台街と外気浴場がある。
濡れた衣服の儘では不味いだろうと、乾燥部屋が二十室ある。
この乾燥部屋だが温風が流れる仕様になっており、ものの数分で衣服を乾かすことが出来る。
それもその筈で、温風が上下左右から流れるのだ。
更に上部にはファンが付いており、常時換気されている為、湿気も直ぐに無くなってしまう。
これも魔石バージョンと神石バージョンがある。
そしてその屋台街の先には休憩所があり、最大で五百名が収容できることになっている。
いろいろな場所に椅子やソファーがふんだんに置かれており、好きに寛ぐことができる。
此処には地味にお金が掛かっている。
特にソファーなどの家具類にはお金が掛かった。
ゴンガスの親父さんはウハウハである。
大量の家具の発注に眼を輝かせていた。
ドワーフの弟子達だけでは無く、既に独り立ちしているゴブスケにも手伝わせて赤レンガ工房に引き籠っていた。
そして細かな気遣いとして、この休憩所には自由に使えるバスタオルと毛布がある。
こちらもアクアマリンさんとウィンドミルさんのバイトの本数が増えそうだ。
既に別館の使用時に着る七分丈の衣服の導入を決めた際に、二人には前もって話してある。
「へえー、そうなんだー」
「いいよー」
相変わらずの抜け感満載の返事を頂いた。
この人達の印象はパ〇ィーだ。
今ではこの二人はサウナ島の住人となっている。
サウナ島に帰ってくると必ずといっていいほど見かける。
どうやら寮に住んでいるらしい。
エリカから新たな家を造りましょうか?と言われたみたいだが、要らないと言われたらしい。
特別扱いしてくれるなとも言われたらしい。
気安くていいじゃないか。
俺はそういうのは好きだな。
まぁこの二人らしいとも思える。
俺はこの二人の気軽さが好きだ。
不思議と落ち着くのだ。
そしてこの休憩室には漫画が自由に読める様になっている。
その冊数は一万冊を超える。
漫画喫茶とまではいかないが、漫画を読み漁る者達で溢れかえるだろうと思う。
今では漫画の複写を俺は行ってはいない。
漫画の複写に関してはハルが印刷所で頑張っている。
今ではあの子も改心し、よく頑張ってくれている。
マリアさん曰く、あの子は漫画編集者としてもセンスがあると唸っていた。
漫画の画角の指摘や、ストーリーへの意見が的確で参考にしているということらしい。
よかった、よかった。
そして先に述べた屋台街だが、せっかくなので内容を話させて頂こう。
その名の通りお酒を提供しているのだが高アルコールの飲料は提供していない。
ゴンガスの親父さん当たりからは文句も出そうなものであるのだがここは譲れない。
酔っぱらった状態でのサウナは控えて欲しいからだ。
ただ、サウナ明けには生ビールや、キンキンに冷えたワインや、レモンサワーは飲んで欲しい。
その為、提供するアルコールは生ビール、ワイン、サワー類に限定している。
因みに『鑑定』でアルコール度数を調べてみたところ、生ビールは5%、ワインは8%、サワーは6%だった。
これぐらいなら酩酊する者は居ないだろう。
逆にこれぐらいで酩酊するぐらいなら下戸に違い無く、そういった人がアルコールを摂取するとは思いづらい。
でも念の為アルコールは程々にすることと、サウナ前のアルコールは控える様にとの張り紙は至る所に掲示されている。
ここまでしてどうにかなったとしても、こちらとしては責任は持てない。
後は利用者の大人の対応を望むばかりだ。
余りに無謀な利用をしている者は出禁にするまでだ。
こちらにも客を選ぶ権利がある。
間違ってもお客様は神様だ!等という考えは持っていない。
というよりこっちが神だっての!
舐めて貰っては困る。
要らない会話があったみたいだ、失礼した!
さて話を屋台街に戻すとしよう。
屋台街を設けるにあたって、一番の問題は決済方法をどうするのかというものだった。
これが日本であればバーコードで管理し、退店時に決済が可能である。
カードや現金やQRコード等様々だ。
今の所それに近しい決済方法は、魔法や神の能力を駆使したとしても考えつかなかった。
そこでここは明朗会計にする事にした。
要は現金決済である。
その為、財布や貴重品を保管するロッカーが必要と、ここもゴンガスの親父さんに発注を行うことになった。
親父さんは有頂天になっていた。
今回のスーパー銭湯の別館の建設に当たっては、ある意味親父さんが一番利益を得ているかもしれない。
それぐらい親父さんに注文が殺到することになってしまったのだ。
でもここは流石の親父さんだ。
その全ての注文に対する工期を守っていた。
ちょっと俺は親父さんを舐めていたのかもしれない。
物造りの神の異名は伊達ではなかった。
まぁ、普段の飲んだくれている親父さんの印象が強いからここは勘弁して欲しい。
そして要らないことに、ここで得た利益を基にサウナ島で酒工房を造らせろと親父さんが言い出した。
そんなことになるだろうとは思ってはいたのだが案の定である。
まぁ別に困ることは無いからお好きにどうぞと許可は出したが、ちゃんとそれなりの賃料は頂くことにした。
到底無料とはいかない。
あと困ったことに、美容室や服屋の様に売歩には出来なかった。
その為エンゾさんに相場を教えて貰って、賃料は固定で設定させて貰う事にした。
ここは致し方あるまい。
親父さんも唸ってはいたが、こればかりはどうしようも無い為飲み込んで貰った。
そもそも赤レンガ工房で好きに無料で鍛冶作業を行っているのだ。
これぐらいは飲んで貰ってもいいだろう。
そもそも親父さんは金に執着し過ぎだっての!
いい加減にして欲しい。
やれやれだ。